自惚れ ページ7
学園祭が近づいてきて、準備もそれなりに忙しくなってきた今日この頃。
今日も横尾くんに朝から「おはよう」の代わりに「好きだよ」を頂いて、
学祭の準備をしてる間もずっとそばにいて、おまけに重い資材を空き教室に持っていくときも、
「おれが持つよ」なんて言ってきたから、遠慮して断ると私の腕を掴んで横尾くんはそれを静止した。
「………おれ、男なんだけど」
『…………………』
「ほら、それも貸して」
ヒョイっと軽々全部持ってしまった横尾くんに、何も言い返せずにその場に立ち尽くすあたし。
なんだというのだろう、この感じ。
散々彼から言われた甘い言葉も、
いつもみたいにかわせる軽い言葉も、
なんでかここ最近過剰に反応してしまう。
今だって彼に掴まれた腕が熱くて、
彼の好意があたしの自尊心をくすぐるのが分かる。
嘘のない輝きと、嫌みのない言葉たちが私の胸を高ぶらせ、そして何故か、締め付ける。
「…�盒供次�早く来いよ」
何食わぬ顔でこちらを振り向く横尾くんから、
眼が離せない。
ーーーーーーーーー
「…で？付き合う気になった？」
『……付き合わないってば』
「往生際が悪いよ」
休憩がてら購買の自動販売機の前で雑談していたら、
ズズッとオレンジジュースを飲むりっちゃんが聞いてきた。
……またその話題か。
なんて思ってたけど今日のりっちゃんはいつになく真剣で、思わず身構えてしまう。
「あんた最近横尾見る眼が変わってきてるもん」
『…は？』
「さっき横尾のことジッと見つめてたくせに」
『……見つめてない』
さっきの見てたのか、気恥ずかしさと半分見え隠れしてるこの想いをりっちゃんは見透かしたようにニッと笑った後、その場にスッと立ってあたしを見下ろす。
「どうして横尾の気持ち知ってるのに拒みも受け入れもしないのよ」
『…こ、拒んでるじゃない！』
「…………あんた自分がどんな顔して断ってるか知ってるの？」
『…え？』
はぁっとため息をついた後、りっちゃんは続けて聞いてきた。
「………あんたがそんな風に頑なにする理由、なにかあるんじゃないの？」
その言葉に声が詰まった。
ようやく出た声はすごく頼りなく聞こえて、
りっちゃんは一瞬で顔を歪めた。
『……人の気持ちって変わるんだよ』
そう言って笑うあたしをりっちゃんは泣きそうな顔をして見てた。
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作者名：ちゅん | 作成日時：2017年2月21日 0時
