痛いくらいの想いを ページ6
「今日さ、テニスサークルの試合観に来てよ」
授業の合間に顔を出した北山先輩に言われて、
今まさにその試合とやらを見学中。
テニスサークルを掛け持ちしてるとは聞いていたけど、実際やってる姿を見るのは初めてでなんだかワクワクする。
『………あ、いた』
ユニホームに着替えてる先輩はなんとも新鮮なもので、
太陽に反射してキラキラ光る髪の毛と、
それに負けないくらいの眩しい笑顔に、
周りにいた女子が黄色い声をあげる。
『…北山先輩ってモテるんだな』
多分別れた事が噂となってもう広まったのだろう。
もともとカッコいい先輩は、愛想がいいからいろんな女の子に優しい。
そのせいでよく彼女さんと喧嘩していたのを知ってる。
女の子たちに手を振る先輩。
それに感激する女子たち。
これじゃその想い人は勘違いしてしまうだろう。
そんなことを思いながら先輩を見ていると、
突然、目の前が真っ暗になる。
『……わっ、…なに』
ふわり、いい香りがしたかと思ったら、
視界を誰かの手で塞がれて、
予想外なことに慌てていると
聞きなれた声がふってきた。
「………………なに、みてんの」
『………！』
パッと上を見上げると、あたしの顔を覗き込むように、不機嫌な顔をした横尾くんが立っていた。
『よ、横尾くん！』
「……………なにその反応」
あたしの反応が気に入らなかったのか、
ニコリともしない横尾くん。
……なんか、これって側から見たら…
フェンスと横尾くんに挟まれるように、
後ろから抱きしめられるような形に気づく。
『ちょっと！やめてよね、びっくりするから』
「高橋もあいつのこと好きなの？」
硬い胸を押し返すあたしなんかお構い無しで、
そんなことを聞いてくる横尾くんはいつもとなんだか違う。
『北山先輩？サークルが同じなだけだよ』
「……答えになってないじゃん」
『べつに、ただの先輩だよ』
「…タダじゃないやつもいんのかよ」
『…横尾くんまで揚げ足とらないでよ』
「…は？」
歓声と黄色い声が遠くに聞こえる。
目線は北山先輩の試合を見てるのに。
なんでか意識だけは、後ろの彼に。
少し触れてる手から、
横尾くんの気持ちが痛いくらい伝わってきた。
横尾くん、横尾くんはどうして、
そんなにまっすぐなの？
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作者名：ちゅん | 作成日時：2017年2月21日 0時
