番外編・三年後 ページ31
「うぃーす、卒業おめでとう!」
『相変わらずですね、北山先輩』
「わざわざ来てあげたのに冷ぇなァ」
いくらOBが自由に出入りできるからって、この人は毎度毎度何かしら理由をつけてやって来る。
私物を持ち帰るためにサークルの部屋を開けたら案の定待ち構えていた。
「ほらよ、食え食え」
『ありがとうございます』
お祝いのつもりなんだろうか、ケーキやお菓子がたくさん机に並べられていて、そこにちょこんと花束まであった。
もう先にお菓子を食べてる先輩を見て、呆れるように笑った。
悪態つきながらも心の中では感謝の気持ちでいっぱいだった。
『…先輩、仕事は?』
「有休消化ってやつよ……あ!今の社会人ぽくね?」
『社会人ですからね』
「真面目に返すなよ!面白くねー!」
「なんかお前横尾くんに似てきた!」なんてわけの分かんないことを叫ぶ先輩に今日ばかりは優しい笑いが溢れる。
「で、愛しの横尾くんは?」
『その呼び方怒られますよ。サークルや教授たちの集まりに顔出しに行ってます』
「あーらら、お前は置いてけぼりなのね」
『あたしが行っても理解できない集まりですし』
「男と二人きりだなんて知ったら横尾くん怒るだろうなァ」
『いちいち喧嘩売りますね、この三年で何回怒られたんですか』
「ふーん、お前らが付き合ってもう三年か」
そう言うとガタリ、と椅子から立ち上がった先輩はジリジリとあたしの方へ向かってきた。
『え、…ちょ、…なに、』
バン!
壁に追いやられたあたしは北山先輩に壁ドンなるものをされた。
『………なにやって…』
「……なんかさ……、お前みてもなんとも思わねーわ!」
『…え?』
おそるおそる顔を上げると、数センチ先にいる先輩はくしゃっとした笑顔でそう言った。
ガラっ、
「…………………」
『…………………』
「……あ、やべ、」
勢いよく開いた扉の向こうに、走ってきたのか汗だくの横尾くんが立っていて、あたしたちを見るなり鬼の形相に変わった。
「……毎回毎回、殺されたいんすか?」
「よぅ!横尾くん!卒業おめでとう!」
「いいから、Aから離れてくれます?」
横尾くんは冷静に淡々と怒るときほどめちゃくちゃ怒ってるって最近分かった。
口元がピクピクしてて、それが面白くて笑うと、
「なに笑ってんだ」と叱られてしまった。
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作者名:ちゅん | 作成日時:2017年2月21日 0時