雪の妖精 ページ17
「……うわ、暗っ」
『…………』
やって来た人物は別に待ち合わせをしていたわけじゃない。
どうぞとも言ってないのに隣に座って、いつもの飄々とした様子でカフェオレを飲んでいる。
白のセーターがよく似合うな。
女子が彼にキャーキャー言ってる気持ちが少しだけわかる。
なんか、なんていうかもう、同じ生き物とは思えないくらい綺麗なんだよね。
雪の妖精みたい。
なんて思ってると「なに見てんの？怖いんだけど」と言われたので睨み返してしまった。
『席、他にもいっぱい空いてるけど？』
「あれ？ほんとだ、気づかなかった」
『ゆったりとしたソファ席がありますよ、お客様』
「きみってほんと、可愛げないね」
ほっといてよ。
それを言うのも面倒なほど、気分が沈んでるあたしを見透かしたのか玉森くんはあたしの顔を覗き込んで笑った。
「………しまった、って思ってる？」
『………………』
「……きみって案外バカなんだね、頭いいから賢いのかと思ってたよ」
『………………』
「でも、もう遅いよ、あの二人は…」
『玉森くん！』
カフェが混んでなくてよかった。
混んでないから、人もいないし、見られなくてすむから。
………こんな、こんな顔…
『…………分かってるから、それ以上言わないで』
「…分かったよ」
ぎゅっと、持っていたマグカップを握りしめる。
あったかいのに、なのに心は寒くて、
横尾くんの手の方がその何倍も暖かかった。
今にも泣きそうなあたしを見て玉森くんはふうっと溜息をつく。
「バカだね、だから言ったのに……渉をあんまりイジメないでって」
『…………………』
「……………どうすんの？」
『………え？』
「諦めちゃうの？』
『……もう遅いよ』
「……………�盒兇気鵑蓮⊂弔里覆砲鮓�てきたの？」
玉森くんは少しだけ怒った顔をしてそう言った。
「何回断られようが、きみだけに真っ直ぐだった渉のなにを見てきたんだよ」
『…………………』
「そんなことも分からないなら、きみは救いようのないバカだよ」
『………………バカバカいうな、バカ』
「バカって言った方がバーカ」
『…………………玉森くん、』
「なに？」
『……ありがとう』
そう言ったあたしに玉森くんは、「バカでもありがとうは言えるんだね」と意地悪な顔して笑った。
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作者名：ちゅん | 作成日時：2017年2月21日 0時
