死神との踊り方【半i間i修i二】

21曲目 追想曲 ページ21

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​────覆水盆に返らず



　いつもテレビが付いていたリビングは静まり返っていて、家には私一人しかいないことを物語っている。望んでいた平穏をやっと手にしたんだ。食費や生活費に悩む必要もないし、何より警察に怯える必要もない。

　やっと、面倒臭い奴から解放されたんだ。そう文句で頭の中の何かを隠して押し込める。



「 布団片付けてってよ、あほ 」



　そんなお行儀のいいこと、半間はやらないだろうけど。帰ってきて、心も身体も疲れていたから片付けは明日にしよう、明日も休みだし。



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　朝起きる。目覚めは最悪で何か嫌な夢を見たような気がする、のっそりのっそりとゆっくり動いて洗面所に向かう。鏡に視線を向ける、寝惚けた私の視線の先には半間が見えた気がして私は「 おはよ 」と無意識に言葉にして、頭が少し冴えて愕然とする。
　アイツはもういないじゃん、て。視線を少し下ろせば、歯ブラシは2本あって顔を顰める。



「 棄てよ、……あとで 」



　顔を洗って、リビングに向かう。適当に朝食を用意して、パンを2枚多く焼きすぎる。頭働いてない自分に少し、バカバカしくなってくる。寂しいみたいじゃん。
　ため息を吐いて、布団をコインランドリーに持っていこうと思って、畳んでいく。嫌でも彼の匂いが残っていて、片付けるのが憂鬱だった。ヤケになって、ぐしゃぐしゃに布団を大きいカバンに押し込む。早く忘れよう、と思って早足で家を出るけど、少しずつゆっくりになっていく。鼻の奥がツン、として鼻をすする。後には、頬を伝う雫があって、うぅ、と子どものように嗚咽が漏れていく。



「 なんで、っ…帰ってこないの 」



　寂しい、厄介者でしかないのに、どうせ今日の朝にはいるかな、て思ってたのに。

　半間に会いたいみたいじゃん、私。

　本当に迷惑な奴、私の家にも日常にも心にも荒らして邪魔して簡単に出ていったんだ。



「 やっぱり帰ろ、 」



　スマホを起動させて、住み着かれていたときでさえ出たことがなかった電話番号に掛けてみる。



「 …まぁ、出るわけないよね 」



　本当になんで私って、勢いに任せて何も考えないでいつも言葉に発してしまうんだろう。後悔するって、どこかで薄々分かってるはずなのに。
　メッセージなら既読で見るかわかるから、て思って送っておいた。“どこにいるの”、なんてあんな言葉を吐いておいて、無責任なことを私は送った。




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