【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ14)

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第17話二人だけのひみつと蚊帳の外ページ14

＿＿＿蝉がうるさい夏のある日。

Aは庭の畑で取れた野菜を、母であるトリシャと共に運んでいた。トリシャは額の汗を拭いながら、柔らかい笑みをAに向ける。

Aはそんな母の表情が大好きだ。

「さてと、じゃあエドとアルにも手伝ってもらおっか。あの子達どこにいるのか分かる？」

『あー…えっと、確か………』

Aは口籠った。
エドとアルの居場所は知っている。しかし、その場所をトリシャには教えたくなかった。

「A？」

『……』

父の書斎だ。
しかし、以前エドとアル、そしてAがその場所へ勝手に入り本を漁った結果、トリシャに怒られてしまった過去がある。

Aは母に嫌われたくなかった。いくら今回自分は口止め程度の役回りだったとしても、トリシャに悪い印象を持たれたくないのだ。

「……なるほど、分かったわ。また父さんの書斎にいるんでしょ？」

『えっ！なんで…』

「そうやってAが口篭る時は大体いけないことしてる時だって母さん知ってるもの」

「じゃ、一緒に二人のところへ行きましょ」と、Aは半ば強引にトリシャに手を引かれた。心の中で兄と弟へ謝罪しながら＿＿＿＿

***

「あらま、やっぱり父さんの書斎散らかしてたのね。本当に本が好きなのね」

「あっ、A！口止めしとけって言ったじゃん！」

『言ってないし!!母さんの察しが良かっただけだし!!』

部屋に入った瞬間、エドと目が合ったAは直ぐに兄と口論となった。頑張ってエドに反論するも、怒っている時の兄の顔は怖いため、Aは母の後ろに隠れながら言葉を飛ばしている。

「まあまあ喧嘩しないの＿＿＿って、あら！だめよエド、そんな所に落書きしちゃ」

落書き？
と、気になってトリシャの後ろからAは顔を出しエドの手元へ視線を移すと、そこにはチョークで描かれた複雑な図形が書いてあるのが見えた。

Aはこの落書きの正式名称を知っている。所謂、“錬成陣”というやつだ。時々A自身もエドとアルに混ざって書いている。

「らくがきじゃないよ。見てて」

「……？！」

エドがそう得意気な様子で言うと、自身の両手をその錬成陣に置いた。瞬間、周りに青い光が飛び散る。

そして、光がちょうど収まった頃だろうか。目を開くと、錬成陣の中心に床の素材を使ったであろう小さなヒヨコの模型が鎮座していた。

トリシャはその模型を見て大層驚いた様子で目を見開く。

「……これ、錬金術よね？父さんに習ったの？」