【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ50)

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『とにかく今はウィンリィの知識に全てを委ねよう。ね？パニーニャ。だから落ち着きな』

「う、うん…ありがとう。なんか眼帯のねーちゃんってもっとおっかないと思ってたけど意外と優しいんだね」

『言っとくけど服の件は忘れてないからな』

タオルを集める手とは反対の手でパニーニャの頭を軽くしばく。パニーニャが何か喚いていたが、今はそんなことをしている場合では無かったためかすぐに収まった。
大量のタオルを二人でかき集めウィンリィの元へ向かう。ウィンリィは私達の姿を見つけると、手を招いてサテラさんのいる部屋を指さした。

「Aとパニーニャは中で手伝って」

「うっ…うん！」

『了解！』

…やはり腹を括るしかない、か。
そうして部屋に入る直前、私はふと振り返ると、強張った表情の兄と弟がこちらを見つめている事に気が付いた。
2人は私と目が合うと、

「がんばれ。A」

「がんばって。姉さん」

と一言、声援を受けた。
2人の応援でやっと決心がついた私は、大きく首を縦に振りそのまま室内へ入る。ベッドに横たわるサテラさんの様子からして痛みはピークに達しているらしく、時折甲高い悲鳴を上げては荒い呼吸を繰り返していた。

あまりにもショッキングな光景に思わず腰が抜けそうになる。血液なんか何度も目にしているはずなのに、この時ばかりはひどくそれに恐怖心を抱いた。
しかしそんな私とは裏腹に、ウィンリィは一生懸命サテラさんの膣口を確認してはタオルを敷いたり水分を取るよう指示したりと至って冷静に見える。

ただ茫然としている自分が恥ずかしくなり、私は自身の足を奮い立たせた。

『ウィンリィ、私に何かできることは？』

「わ、私も！」

「！…そうね、じゃあAはサテラさんの汗を拭って、パニーニャは新しい飲み水を汲んで！」

そこからの行動は早かった。
私やパニーニャはウィンリィの指示に従順に従い、尚且つサテラさんの状態の変化を確認したりサテラさんと共に出産時の呼吸法を行ったりと、全力でお産に貢献した。

そうして数時間経った後、ついにその時は訪れる。

過酷なあまり記憶が途切れ途切れになっていた頃だった。緊張のあまり遠のきそうな意識の中、ふと耳が空気の振動を感知した。

空気の振動＿＿＿音、いや、これは＿＿＿泣き声？

その声が何なのか理解した瞬間、私の意識は一気に鮮明になる。いつの間にか下を向いていた顔を勢いよく上げると、そこにはずっと待ちわびていた光景が広がっていた。