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急な気候変動に嫌な予感を感じ、私はエド達に早く帰る趣旨の提案をしようと口を開きかけたが、一生懸命弟子入りしようとドミニクさんを説得しているウィンリィを見て喉まで出かけていた言葉を飲んだ。
エドと共に全くウィンリィを弟子に迎えようとしないドミニクさんを説得しようとする2人。数十分にわたる口論の結果、強面の彼から告げられたのは一言、
「さっさと帰れ」
という、非情な返答だった。意思を変えることのなかったドミニクさんに項垂れるエドとウィンリィ。一方私は、また別の事情で頭を抱えていた。それは外を見れば一目瞭然だろう。
『…………帰れない』
―――土砂降りだ。オマケに落雷付き。
突然の天気の崩れように呆然とするエド達とは対照的に、リドルさんは湿気で曇った眼鏡を拭きながら「ははは」と軽く笑った。
「雨が止むまでうちでゆっくりして行きなさい」
***
『うーん……やっぱ天気悪い日は右眼痛むなぁ…』
「姉さん大丈夫？」
気圧の変化で痛み出した右眼を眼帯越しに抑えていると、私を心配したアルが寄り添うように隣に腰かけた。アルは顔を覗き込むと、優しい手つきでそっと私の頭を撫で始める。そこが痛いわけでもなかったが、なんだかこうされていると痛みが和らぐ気がした。
そして私とアルの近くでは、同じよう機械鎧の付け根を擦る兄の姿が。そういえば、以前悪天候だった日も痛そうにしてたっけ。
『ありがと、アル。私はもう大丈夫だから兄さんのとこ行ってあげな』
「そう？」
『うん。なんかあっちでサテラさん忙しそうにしてるし、私はそっち行ってくるよ』
少し開いた扉の向こうで、ジャガイモを抱えて歩いているサテラさんを横目に、私はエドとアルに目を向けながらドアノブに手をかけた。扉の向こうでは、サテラさんがついさっきと同じようにジャガイモをザルに入れて運んでいる。
突然部屋に入ってきた私に驚いていた彼女だったが、サテラさんは目一杯の笑顔で出迎えてくれた。
「どうしたの？」
『あー…いや、なんだか忙しそうにしてたので何か手伝えることないかなって』
「フフ、ありがとう。でも気持ちだけ受け取っておくわ。あなたはお客さんですもの…手を煩わせるわけにはいかないわ」
『うーん…でもそんな大きなお腹で無理をするのは……そうですね、じゃあ食材運びくらいは手伝わせてください』
「そうね…うん、分かったわ。じゃあお言葉に甘えちゃお―――いッ！」
――耳を劈くような音が空間に響いた。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
