【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ46)

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『え、あの…いいんですか？』

「ふふ、遠慮しないで。小さい内からいろんな人と接するのは大切な事だし、あなたみたいな心優しい子が触ってくれたらきっとこの子も喜ぶわ」

…もしかして、ずっとソワソワしていたのを見られていたのかな。

私自身、妊婦さんに触れる経験は無かった為、エドがサテラさんのお腹を触っているのを見て羨んでいた部分があった。きっと彼女にはその心情を見透かされていたのだろう。

兄と弟の生暖かい視線を背に、私はサテラさんの大きなお腹にそっと手のひらを添えた。

『わっ……』

「どう？」

『なんか……こう、言葉じゃ言い表せない不思議な感じですね』

あったかい。
いや、生きている人だから体温があるのは当たり前の事なのだが、サテラさんの体温とはまた違う別のベクトルのあたたかさがそこにはあった。
僅かに手のひらから伝わる生命の胎動に、私は思わず感嘆する。

『……私もいつかこうなるのかな』

「あら？彼氏でもいるの？」

『いや～お恥ずかしい事に1度も恋人は出来たこと無くて…』

「Aに男とか天と地がひっくり返っても出来ねーだろ」

『なんだと』

めちゃくちゃ失礼だなこの愚兄。気付いてないとはいえ自分はウィンリィがいるからって馬鹿にしよって……

しかし今まで男っ気がなかったのは事実だった為、とりあえず私はエドへ無言の腹パンを返した。突然の腹パンに当然憤慨したエドがギャイギャイと何か喚いていたが、私は耳を塞いで聞かない姿勢を取る。耳を塞ぐ直前、「まーたやってるよ」と呆れるアルの声が聞こえた気がしたがきっと気のせいだろう。

そんなこんなしていると、それまでドミニクさんと話し込んでいたウィンリィが満面の笑みでエドへ手招きしている姿が見えた。エド達と共にドミニクさんへついていくと、私達は工房の中へ通された。

工房の中へ入って早々またもや下着一枚に引っぺがされたエドは今、ドミニクさんに機械鎧をまじまじと観察されている。

「強度を上げて、それでいて軽くしたんですけど…」

「確かにこいつの身体の割には重い機械鎧だな」

とても真剣に話し合っている様子の二人。こりゃまた時間掛かりそうだな。
機械鎧を着けていない私には蚊帳の外の話題なので、とりあえず窓からぼーっと外を眺める事にした。さっきまで肌を焼かんばかりに日が差す天気だったのとは打って変わり、今は空が黒く濁ってきている。