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『あっ、また逃げた！』
「へっへー！捕まえてごらん！！」
満面の笑みで走り出す少女に腹立たしさを覚えつつも、私はもう一度少女を捕まえるべく彼女の背中へ手を伸ばした。
―――と、その時、私とは別の華奢な腕が少女の腕をがっちりと掴んだ。
「逃げようったってそうはいかないわよ」
少女の腕を掴んだのは、傍で私達を見守っていたウィンリィだった。予想外の人物に捕まった少女は呆気に取られたのか中々動こうとしない。
『ナイスだウィンリィ！』
「でかした！その盗っ人離すんじゃねーぞ！！」
喜々とした様子のエドがウィンリィの方向へ走り始める。エドの指示にウィンリィは力強く頷いた。
「ええ…離すもんですか
その機械鎧、もっとよく見せてくれるまで離さない♡」
「…………」
『……えぇ？』
***
「すごいすごいすごい！初めて見るわ、こんな機械鎧！！」
大層興奮した様子でぴょんぴょんと跳ねるウィンリィに、少女―――パニーニャは困惑しながら脚をさらけ出していた。
両手に枷をした無抵抗の少女のスボンをたくし上げ、脚をべたべたと触り観察するウィンリィは、傍から見れば不審者と思われても仕方が無い。
「サスペンションも他の機械鎧と比べ物にならないくらい高度だけど、なんと言っても全体のバランスが――」
「いい天気だなぁA、アル」
『「そうだね兄さん」』
一方私達兄弟はと言うと、ウィンリィとパニーニャのやり取りが終わるまで道端でぼんやりと暇を持て余していた。如何せんウィンリィは火がつくと話が長くなる。
その間の暇潰しが今の私達の課題だ。
「ねぇパニーニャ！この機械鎧を作った技師を教えて！」
「え？いいけど…」
興奮が冷めないウィンリィの様子に圧倒されながらも、パニーニャは一瞬何か考える素振りを見せるとにっと笑った。
「すごい辺鄙な所に住んでるから案内が必要だよ」
「ええ〜〜〜？」
「あたしが案内してあげるからさ、かわりに今日のスリの件は見逃してくれる？」
……ん？
「うん！見逃しちゃう！」
んん？？？？
『待って待って待ってウィンリィ』
「ん？どうしたのA」
「勝手に決めんなよウィンリィ！！こいつは憲兵に突き出すに決まってんだろ！」
「何よ、スリのひとつやふたつ！肝っ玉のちっさい男ね！」
「ちっさい言うな！」
「ケチくさいわねー！」
「とにかくだ！そいつは憲兵に突き出して！時計は返してもらう！」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
