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と、いう事で私はボロボロになってしまったお気に入りの上着を泣く泣く手放す事になった。今は下に着ていたノースリーブの黒い服1枚でエドと少女の元へ移動している。絶対許さねぇ。
お気に入りの上着をダメにされた怒りを胸に募らせながらアルと並行して走っていると、丁度エドと少女が戦っている最中の場面へ出くわす事が出来た。
「派手にやってるね」
『ソウダナ』
アルが何か言ってるが私は今それどころでは無い。頭の中はあの少女に一矢報いる事でいっぱいだ。そんな事を考えながら目を光らせて居ると、遂にその時がやってきた。
エドの手から逃れた少女は呑気に私とアルがいる場所へトテトテと歩いてくる。
―――私はその油断を絶対に見逃さない。
『待ってたぞ……上着の仇』
「えっ、眼帯の姉ちゃん？！」
彼女が驚いている一瞬の内に私は両手をパンッ、と叩き地面へ両掌を着いた。瞬間、目にも留まらぬ速さで道路の舗装がみるみる少女を取り囲む。
たった数秒にも満たない間に、少女を大きな檻に捕らえる事に成功した。
『っしゃあ！』
「お見事！」
いつの間にか傍にいたウィンリィに褒められた。爽快だ。これで上着も報われる事だろう。
「へっへっへ、観念しやがれこのアマ！」
「兄さんそれめちゃくちゃ悪役のセリフ」
顎に伝う汗を右腕で拭いながら檻へ近付いてくるエド。勝ち誇った笑みを浮かべる兄に対しても、まだ少女は余裕を崩さなかった。
「ふーん…」
コンコン、と少女は関心した様子で檻を指の関節で叩いた。……一体彼女は何を考えているんだ？
「危ないからちょっと離れてて」
「あ？」
『？』
突然私達へ警告を促す少女を意味が分からない、とじっと見つめていると、彼女はおもむろに右脚を振り上げた。
ガランッ
―――気が付いた時には、檻の一部が地面へ転がっていた。
『なっ…！』
少女の右脚へ視線を移せば、脚の脛辺りからは鋭い刃物がズボンを突き破って見え隠れしているのが分かった。
あの運動神経で脚は機械鎧だったのか？！
「珍しくもないでしょ。こんな街なんだし」
凝視している私達に対し、次に少女は左脚を上げて得意気に笑った。
「ちなみに左脚には1.5インチ、カルバリン砲が」
どーん、と一発少女は左膝から砲弾をぶっぱなした。ちょうどすぐ後ろで弾が爆発し、爆風でアルの頭が飛かける。
「両足が機械鎧であの運動能力……」
「うそ…」
『マジか……』
驚いて固まっている間にも、気づいた時には少女はまた逃走を測っていた。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
