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いくら建物間を移動しても追い付いてくる私に驚いたのか、少女は楽しそうにクスクスと笑った。
「こんなに屋根の上移動してんのにまだ追い付く人なんて初めてだよ―――――――でも」
『？』
「―――路地ならどうかな？」
少女はそう言ってニヤリと口角を上げると、そのまま下の路地裏へと飛び降りた。突然方向転換した彼女に驚きつつも、私は臨機応変に少女の動きへ対応する。
「待ちやがれえええええ！！」
『あ、兄さん！』
私が裏路地へ着地した丁度その時、裏路地の入口から鬼の形相でこちらへ走ってくる兄の姿が見えた。
そしてもう一度少女の方へ目をやると、向かいからはアルが接近しているのが伺える。
挟み撃ちだ。
「！」
アルの姿に気が付いた少女は、入り組んだもう1つの路地へ方向転換したがなんとその先は行き止まり。見事にエドとアルのチームプレーが項を為したというわけだ。
「ありゃ、行き止まり？！」
「追いつめた！！」
「A、アルでかした！」
―――だが、その束の間の喜びは直ぐに崩れ去ることになる。
少女は行き止まりの障害となっていた高い壁の前で急ブレーキを掛けると、その反動で起こった運動を利用し側壁を蹴って壁を飛び越えたのだ。
どういう運動神経してんだこの子…！
「軽業師かよ？！」
『大丈夫兄さん。私先に追ってるから！』
「え」
そう言い残し、私は壁の前でぐっと脚に力を込めると、運針の脚力でそのまま壁を飛び越える。壁の縁へ手を掛け、向こう側へ着地しようとする――――――が、
「ガルル」
『えっ』
ニッコリ笑う少女と………―――“狂犬”が、いた。
『うわあああああああ！！？？！』
え、犬？なんで犬？しかも滅茶苦茶敵意剥き出して、え？
混乱して身動きが取れないにも関わらず、犬は容赦なく私へ飛び掛った。
腕噛まれた！痛い！服が！破ける！！！！！！
情報量の多さに脳が処理しきれず中々体勢を立て直せずに居ると、私の悲鳴を聞き付けてエドとアルが壁に扉を錬成し、こちらへ駆け寄ってきた。
「A？！」
「あちゃー…いい子だから姉さんを離してあげて、ねっ？兄さんは早くあの子を追って。姉さんは僕が回収しておくから」
「お、おう…」
私の上にあった重りがアルの静止でスっと軽くなる。チラリと横目で様子を伺うと、犬はアルに怯えて路地の端で縮こまっているようだった。
「姉さん大丈夫？」
『腕が…服が……』
「腕は大丈夫そうだけど…服が派手にやられちゃったね。あとで着替え取りに行こうか」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
