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脅して技師達から聞き出した情報を頼りに、私達は古物商へと走った。苦労の甲斐あってか、その“グロッツ”という店はあっさり近くの裏路地で見つかった。
まずは店主に話を聞いてみなければならないだろう。そう考えた私とエドは、扉へ手を掛けようと歩みを進める。
「―――んな」
「―――されたかな」
――薄い扉1つ隔てているだけだからだろう。店へ少し近付けば、中から2人分の声がうっすらと漏れてきた。
取引中だろうか？中から聞こえるその人物達の声色はどこか困っている様子だった。更に耳を澄ませば、カチャカチャと何か金属を弄るような音が小さく鳴っているのが分かる。
「―――ネジ巻いてみようか」
―――時計だ…！
私よりも1コンマ早く理解したのだろう。気が付いた時には、突き破る勢いでエドは思い切り扉を開いていた。
「動かすな！！！」
扉が開いた拍子に埃が舞う薄暗い店内には、カウンターでやり取りをしている男女が2人。薄い頭が目立つ老人の店主に向かい合っている色黒の少女の手には、主張の激しい銀色の時計が握られている。
「……フタも開けるな！！」
一般人ならたじろぐ程の剣幕で睨むエドだったが、対する少女は表情ひとつ変えない。どことなくこの状況には慣れている、という余裕のオーラを感じた。
エドもその態度に気が付いたのか、更に怒りに表情を歪め、少女へズカズカと歩み寄る。
「野郎……じゃねぇ、この女…！」
「やばっ」
流石にエドの尋常ではない様子に身の危険を感じたのか、少女はそう口から言葉を洩らす。
そして何を思ったのか、足の甲で置いてあった壺を器用に持ち上げ―――
「ほい兄ちゃんパス！！」
―――壺をエドの方向へ真っ直ぐ蹴り飛ばした。
「のわ――――――――！！それ80万するツボ――――――っっ！！」
店主が叫んだ。
そんな額を聞いたら無視できるはずもなく、反射でエドは“両手”でしっかりと壺を受け止める。
「ナイスキャッチ！」
両手が塞がったエドが少女を捕まえられるはずも無く、壺から手を離す僅か数秒にも満たない間に少女は窓から逃走した。
『あっ、こら待てええええ！！！！』
「おっ、姉ちゃん凄いねぇ。こんなとこまで来れるなんて」
建物の屋根へ飛び乗り、私はエドとアルより一足先に少女を追い始める。建物間をまるで猫のように飛び回りながら逃げる少女。だが私の跳躍力も負けちゃいない。伊達に訓練していないからな。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
