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エドの攻撃対象が、アルから私へ切り替わったようだ。
私を外したエドの足は、一旦地面へ着地すると、今度はバネとしての役割を果たしエドは私との間合いを一気に詰める。
至近距離まで迫ったエドの拳、これは避けられないな――――と、思った瞬間エドの身体を鎧の腕が横から殴り飛ばした。
「ちょっと兄さん！姉さんの傷口まで開いちゃ―――うわぁ？！」
―――エドを叱責しようとしたアルの視界が、真っ白な布で覆われた。これは……すぐ側で干してあったシーツか？
視界を覆われ反応が鈍ったアルの頭を、エドは布越しから容赦なく足蹴りを喰らわせる。
がしゃん！と大きな音を立てながら、アルは地面へ身体を叩きつけた。顔を布で覆われたままのアルを見下ろすようにエドは立つと、
「勝った！」
とだけ言い、その場に腰を下ろした。緊張が解けたのか、つられて私も地面にへたり込む。
「へっへ…初めてアルに勝ったぞ」
「…ずるいよ兄さん」
「うるせーや、勝ちは勝ちだ！」
布を顔から剥ぎ取りながら、不満そうにアルは呟いた。エドは背中を地面へ預けると、アルと同じような体制で空を仰ぐ。
「…………小さい頃からいっぱいケンカしたよな、オレたち」
『「うん」』
「今思えばくっだらねぇ事でケンカしたよな」
「二段ベッドの上か下か…とかね」
「あの時確かAに漁夫の利されたんだったな」
『あー…そうだっけ？』
「おやつの事でいつもケンカしてたっけ」
「勝った覚えが無ぇや」
「オレがアルの本に落書きした時もな」
『あれはアルに見つかる前に私に見つかってボコされてたろ』
「おもちゃの取り合いとか」
「ボクが勝った」
『レイン川で遊んでた時も』
「オレ川につき落とされたっけな」
「“ウィンリィをお嫁さんにするのはどっちだ”ってケンカもした」
「え！？そんなの覚えてねーぞ！！」
「やっぱりボクが勝った。でも2人ともふられて何故か姉さんがウィンリィと婚約結んでた」
「…あっそう」
―――懐かしいな。あれもこれも、3人で過ごした記憶は全部楽しい事ばかりだ。
「―――全部、うその記憶だって言うのかよ」
「…………ごめん」
「イーストシティでお前言ったよな。“どんな事をしても元の身体に戻りたい”って。あの気持ちも作り物だったって言うのか？」
「…………作り物じゃない」
アルは拳をぎゅっと固める。
「そうだ、絶対に3人で元に戻るって決めたんだ。これしきの事で揺らぐようなぬるい心でいられっかよ」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
