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「それでもやっぱり生まれ育った家が無いっていうのが現実なんだ。ボク達、家を焼いた事は後悔してないけど時々無性に泣きたくなる事があるよ」
『……』
「いっそ、一度思いきって泣いちゃえばふっきれるかもしれないけどこの身体じゃ泣くに泣けない」
アルの言葉を聞いたウィンリィは、少し口角を上げて寝ているエドを見つめた。
「泣ける身体があるのに泣かないバカ達もいるしね。ほんと、強がっちゃってさこのバカは…」
柔らかく微笑んでエドを見るウィンリィ。
そのままそのゆったりした視線を私へ滑らせ、ウィンリィは碧い瞳を細めた。
「アンタもだからね？」
『へへ…』
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「世話になったな、ばっちゃん」
「ああ」
純白の手袋をぎゅっと手にはめながらエドはピナコばっちゃんに別れを告げる。
まだぼんやりしている目を擦り、私は頭を押し付けてくるデンをわしわしと撫でた。
「あれ、ウィンリィは？」
アルが鎧の頭を動かして辺りを見回す。
「徹夜続きだったからまだぐっすり寝てるよ。起こしてくるかい？」
「あーいいよいいよ。起きて来たら機械鎧の手入れはちゃんとしろだのあーだこーだうるさいから」
手をヒラヒラさせてエドはウィンリィの登場を拒否する。
そんな事言いながら本音は見送って欲しいんだろうな〜、と私はぼんやりとした頭で考えた。
「アンタは相変わらず朝に弱いねぇ〜」
『んー…面目無い…』
「ほら姉さん、ちゃんと立って」
アルに姿勢を正されながら、私は腕を天へ伸ばした。
「それじゃあな」
「ああ、気をつけて行っといで。たまにはご飯食べに帰っておいでよ」
タバコを吹かしながらピナコばっちゃんはニヤリと笑った。
「うん、そのうちまた」
『絶対行くからね』
「こんな山奥にメシ食うだけに来いってか」
私とアルとは対照的に悪態をつくエド。
すると、私達の後ろを歩いていた少佐が「ふっふ」と小さく笑った。
「？なんだよ」
「迎えてくれる家族…帰るべき場所があるというのは幸せな事だな」
「へっ、オレたちゃ旅への根無し草だよ」
ふいっとエドが少佐から顔を背けた瞬間、家のベランダの方から私達を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。
その方向を見上げると、ベランダの手すりに身体を預けたウィンリィの姿があった。
「いってらっさい」
まだ寝起きで呂律が回っていない、拙い言葉を発してウィンリィは手を振った。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
