第13話 鋼のからだ ページ26
きっと内臓は傷付いていないはずだ。外傷だけ塞いでおけばあとは病院にでも行けばいい。
―――死んでも賢者の石を使うつもりは無い。
「あらそう？じゃあこの石は回収させてもらうわ。調べられたら色々面倒だし―――行くわよ、エンヴィー」
「あ、やっと話し終わったの？」
ソラリスさんが“エンヴィー”と名を呼ぶと、薄暗い柱の影から中性的な細身の少年がひょこっと現れた。少年はこちらにへトコトコと近付くと、横たわる私の目の前でしゃがんだ。
「初めまして、鋼のおチビの妹さん。ラストから聞いたよ？君、“人柱”確定なんだってね！」
ニッコリ笑いながら少年は私の頭をバシバシ叩く。……いろいろ聞きたいことがあるのに、そろそろ限界のようだ。意識がどんどん薄れていっている。
「あらら、もう終わり？もっと聞きたいことあったんだけど…まあそれは鋼のおチビさんから聞くことにするか。じゃまたね、妹さん」
趣味の悪い笑みと腹の痛みを残し、そこで私の意識は途絶えた。
***
『……は』
―――知らない天井だ。
背中には柔らかい感触。ここは……病室？
状況を把握するために身体を起こそうとするが、それは腹に感じる激痛によって妨げられた。とりあえず腕は動くので、手で体の状態をある程度確認しよう。
『ふむ…』
頭には包帯、腹にも包帯…そして腕には輸血用の点滴、かな？これは。
とりあえず生還は出来たのか。しかし代償は大きかったように思う。この腕の輸血液が良い例だろう。
『兄さんとアルは…』
あの2人はどこにいるのだろう。そんな事を考えていると、タイミング良く病室の扉が開いた。
「姉さん……？」
聞きなれた優しい声。扉の方を振り向くと、そこには棒立ちしているアルの姿があった。
アルは私の方へ鎧を鳴らしながら駆け足で近付くと、安心して力が抜けたようにベッドへ両腕を沈みこませる。
「良かった…目が覚めたんだね…」
『どうしたんだよ、そんな大袈裟な…』
「大袈裟って、姉さん丸2日も目を覚まさなかったんだよ？！」
『えっ』
横たわる私にズイっと頭を近付けてアルは叫んだ。
ま、丸2日も私は意識が無かったのか……
謝罪の意も込めて、私はアルの鎧の頭を優しく撫でる。珍しく声を荒らげた弟だ、きっととても心配してくれていたのだろう。
『――そうだ、兄さんはどうなったの？』
「…兄さんは左隣の病室にいるよ。姉さん程重症じゃないから大丈夫」
『そっか…良かった…』
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
