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弟が兄へ返事をしてその大きな鎧の腰を上げると、案の定看板に頭をぶつけラジオを落としてしまった。
バゴッと地面へ叩きつけられるラジオ。店主の叫び声と共に、ラジオは部品をぶちまけながら力なく地面へ転がった。
「あ」
「ちょっとお!!困るなお客さん!だいたいそんなカッコで歩いてるから…」
「悪ィ悪ィ、すぐに直すから」
兄はへらへらとしながら怒り狂う店主を宥める。
一方弟は壊れたラジオの周りをチョークで描いた円で囲っていた。“アレ”をやるつもりらしい。
「直すからって…」
「まあ見てなって」
「____よし!」
弟は“陣”を描き終わったらしく、しゃがんでいた体制から身体を起こした。
「そんじゃいきまーす」
『お』
「?」
弟が陣____否、錬成陣に手をかざした瞬間、激しい光が周りにボッと散った。あまりの眩しさに一瞬目をぎゅと閉じる。
「うわあ?!_____な…」
少しの煙と共に目の前に現れたのは、完全に元に戻ったラジオだった。
兄は直ったソレを指差しながら「これでいいかな?」と、少し自慢げに笑みを浮かべる。直したのお前じゃないだろ。
「………こりゃおどろいた」
店主は目を点にしながらラジオを凝視している。
すると、弟に食いつくように店主はバッと振り向いた。
「あんた、“奇跡の業”がつかえるのかい!?」
「なんだそりゃ」
兄は呆れながら店主を見つめる。
『私達錬金術師ですよ』
「エルリック兄弟って言やぁけっこう名が通ってるんだけどね」
そう言うと、周りの民衆がざわざわと騒ぎ出す。
「エルリック…エルリック兄弟だと?」
「ああ、聞いたことあるぞ!」
「兄の方がたしか国家錬金術師の……」
「“鋼の錬金術師”エドワード・エルリック!!」
その名前が出た瞬間、兄は大層嬉しそうにフフんと鼻を鳴らした。____しかし民衆が集まって行ったのは弟の方だった。
「いやぁあんたが噂の天才錬金術師!!」
「なるほど!こんな鎧を着てるからふたつ名が“鋼”なのか!」
「あの…ボクじゃなくて」
「へ?」
「あっちの金髪のちっこいの?」
あ、ヤバい。
「誰が豆粒ドちびかーーーーーーッ!!!」
兄の逆鱗に触れてしまった。
「「「そこまで言ってねぇーーー!!」」」
『こら』
「い"たっ」
私は兄____もとい、エドの頭をシバきながらエドが暴れて散らかした店の備品を拾い上げた。
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時