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四十八話:思いは永遠に ページ8

『ぜぇ.......柱はまだか。そろそろまずいな.....』

鬼舞辻無惨は、同じ鬼である珠世によって作られた人間に戻る薬を解毒し、Aと戦っていた。

既にAの体は限界を迎えていた。

肋骨は数本折れているだろう。

内臓もダメになっているかもしれない。

片目はもう映らない。

髪はざんばらに切られ、肩ほどの長さ。

左手の薬指と、右手の小指と中指が無くなった。

左足には無数の傷がつき、普通なら動けない。

それでも、Aは戦い続けた。

『私の、仲間を!最愛の兄を!何故、何故!傷つけた!私などを、大切にしてくれたあの優しい人を!あの人は、幸せに暮らせるはずだったんだ!何不自由なく、幸せに暮らすべき人なんだ!

私は貴様を....許さない!』

覚えていない"何か"を守るため。

数え切れないほど失った"仲間"を守るため。

彼女は刃を振るう。

鬼舞辻「人間が脆いからだ。鬼になっていれば、失うことは無い。」

鬼舞辻無惨には、無いものを彼女は持っていた。

感情さえ失った彼女が、今まで耐え抜いてきた思い。

『.....やはり、ここで殺す。』

それは、主である産屋敷の願いだからだろうか?

『殺せなくとも、足止めはする。』

それとも、ただの気まぐれ?

『絶対に、貴様を倒す!』

どれも違う。

『音の呼吸 終之型 冬の寒音』

それは、双生の片割れの思い。

"幸せになって欲しい"

ヒューッと、とても細く高い音が聞こえた。

それは冬の風に似た、乾いていて冷たい音だった。

それはさながら、Aの心情を表しているようだった。

しあわせにはたくさんの形がある。

お金持ちになること。

素敵な人と結ばれること。

Aの幸せは......






"人を助けること"






ただひたすらに、Aはそれだけを考えていた。

人を助けたい。

人殺しの一族に生まれ、今まで何人殺したのだろう。

その罪を償うため。

そして、もう人を失わないため。

Aは、刀を握ったのだ。

この生き方が、Aにとっての精一杯の幸せな生き方だった。




とてつもない速さでAは技を繰り出す。

三発目にかかった時だった。

『カハッ....!』

口から血が出る。

鬼舞辻無惨のニヤリとした顔を最後に、視界が遮られた。

頭から後ろに倒れ込み、呼吸を使う。

大動脈が破裂していた。

首元の太い血管は、命を繋ぐ。

今、Aはそれが切れたのだ。

竈門「Aさん?!」

焦ったような声に、Aは叫んだ。

四拾九話:そして→←四十七話:戦いの幕開け



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雨中猫 - 続き…続きをっ…!!! (2022年1月19日 20時) (レス) @page19 id: 4588060cb6 (このIDを非表示/違反報告)
カノカノ(*´∀`*) - 最高です!更新頑張って下さい! (2021年4月10日 14時) (レス) id: fb067314f3 (このIDを非表示/違反報告)
ただのバカ - 塾頑張ってください。 (2021年1月15日 23時) (レス) id: 6d1560da95 (このIDを非表示/違反報告)
ナツミ - 面白くて大好きです!続きも頑張ってください (2020年11月27日 19時) (レス) id: 845acaff50 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年11月14日 16時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花陽 | 作成日時:2020年10月29日 23時

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