第五巻 ページ6
狐に摘まれているの...?
そんな事を考えながら、食堂から自室へ向かい、早めに布団の中へ潜り込んだ。
そして、この現実のようなものが夢であることを願い、紫月はそっと眠りについた。
___
朝が訪れ、目が覚める。
やはり、秋が近ずいているせいか、空気が少し肌寒い。
体を起こし静かに辺りを見回すと、とっくに目が覚め支度をしている薬売りと、まだ布団に篭もり、眠る浅葱の姿が見受けられた。
「あぁ、紫月さん。起きましたか。」
薬売りは目が覚めた紫月に気づき、声をかけた。
「はい、おはようございます...。」
紫月も薬売りと同様に挨拶をした。
「まったく、前夜に夜更かしをするから...。」
薬売りはまだ寝ている浅葱を見てそう呟く。
その視線の先に目を向けると、浅葱が眠る枕元には、書物が数冊重ねて置いてある事に気がついた。
夢では...ないのか。
現実に突きつけられ失望し、目線を落とす。
そんな紫月を心配し、薬売りは紫月にまた声をかけた。
「やはり、紫月さん疲れているんじゃありません?薬、差し上げますので飲んでください。」
「......すみません、いただきます。」
薬売りが出してくれた薬をそっと飲み、少しばかりのため息をついた。
__もう、薬売り様に心配かけてはいられない。
紫月はそう決心する。
薬売りは少し雰囲気だけでも明るくなった紫月を見て微笑み、その後、目線を未だに寝ている浅葱に向け、睨みつけた。
「いつまで寝ている。」
少し怒りの篭った声でそう言った。
「.........昼辺りまで。」
しかし浅葱は怖気ずかずに言い返す。
「今、起きてくれ。」
ため息混じりで呆れたように薬売りはまた言った。
「......嫌だなぁ。」
浅葱は諦めたようにそう言い、嫌そうな表情で布団から出てきた。
「おはよう、紫月さん。遅れてすまないね。」
「いえ。おはようございます。」
二人ともそう挨拶を交わした。
紫月はそんな他愛のない会話を眺めて、浅葱を疑いながらも少し、楽しそうに微笑んだ。
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作者名:赤青ほととぎす/瑪瑙 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2018年11月27日 22時