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Aは飛び起き、慌てて傍らに置いていた手燭に火を点けた。
それを持って家の中を移動し、先ほど見つけた多数の本が置かれた部屋へと向かう。
ナルサス所蔵のものだと思われるそれらを手燭の灯りで物色し、パルス全土の地図が描かれたものを探し当てた。
――それは彼に師事していた頃、貰ったものと同じ物。
床に手燭を置き、焦る心のままに本を開く。
地図を探し、アトロパテネからバシュル山までの距離を確認し、敗戦と報せが届いた日を逆算し、それとナルサスが出ていった頃が丁度重なることに辿り着いた瞬間、Aの中で燻っていた『可能性』が現実味を帯びた。
鼓動が興奮で早鐘を打ち始める。
冷えた指先に血が巡り、本を持つ手が震える。
唇からこぼれる吐息が僅かに涙に濡れる。
「……殿下……兄様……」
確証などどこにもない。
都合の良い願望や空想だと言われても否定する要素を持たない。
だが、浮かび上がった可能性はAの中では真実だった。
不安と恐怖に張り裂けそうな心を守る、唯一の希望だった。
もしも――もしもアルスラーンとダリューンが無事でいて、ナルサスを頼ってここに辿り着き、その手の助けを借りて出ていったのだとしたら。
――まだ、間に合う。
本を閉じ、両手を祈るように胸の前で組み合わせる。
闇に揺らめく灯火をじっと見つめる横顔に冴え冴えとした意志が浮かび、徐々に凪いでいく。
己の成すべき道を見つけた者が見せるその表情を、夜空の欠けた月が無言で照らしていた。
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キース(プロフ) - めっちゃ面白いです……この作品に出会えたこと、本当に嬉しく思います。更新は無理をなさらず、お好きな時になさって下さい。待ってます！( ^ω^ ) (2022年2月18日 17時) (
レス) @page36 id: f19164db3a (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - Ｅさん» コメントありがとうございます！最終更新日から時間が経ってしまっていますが、そう言って頂けて大変嬉しいです。先の構想はあるため、ゆっくり綴っていけたらなと思います。その時はまたお付き合い頂けたら嬉しいです(^^) (2020年5月9日 17時) (レス) id: 2ce5584cfa (このIDを非表示/違反報告)
Ｅ - 令和２年５月、あなたの文章は何度も私の心に響いています。いつか、この先のお話が読めることがあればと祈っております。何年たった後でも、ふとした時でもいいです。いつか先を紡いでいただくことを祈って、私は勝手ながら時折戻ってきさせていただきます。 (2020年5月5日 0時) (レス) id: 5e3fff8559 (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - 柘榴ぷぁふぇさん» ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです。お気遣いありがとうございます(^^) 更新頑張ります！ (2019年3月30日 21時) (レス) id: 2ce5584cfa (このIDを非表示/違反報告)
柘榴ぷぁふぇ - 貴方様の作品全てがとても好きです。これからも応援しています。お体に気をつけてください。更新待っています (2019年3月30日 16時) (レス) id: 9d70aca6ea (このIDを非表示/違反報告)
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