6 ページ8
「本当に、おぬしは花が好きだな。」
その言葉に彼女は微笑んだ。
「はい。地に根を張り懸命に咲く花の強さが、好きなのです」
見目は美しく儚く可愛らしい。
けれど、その根は深く地中に伸び、枯れても次の花を咲かす。
その強さと流転が、ひどく心を打つ。
Aの言葉にアルスラーンが笑いながら頷いた。
「わかった。おぬしの案に賛成だ。行こう」
「はい！ では、こちらへ」
そう言いながら、その笑顔にほっとした。
自分の主の沈んだ表情を見るのは辛い。
どうか、いつでも笑っていて欲しい。
その笑みが曇らずに済むように。
誰もこの王子を傷付けることなきように。
密かにそんなことを願いながら、Aはアルスラーンとやれやれという顔をしているヴァフリーズを率いて王宮の庭を目指した。
1日のほとんどはアルスラーンの傍に控えているAだが、たまに時間が空くと庭へ出ることが多い。
美しい花々に囲まれて見上げる空は、王宮の中で見るそれよりも広く高く見えた。
それを眺めることは、もしかしたら花を愛でる以上に好きかもしれない。
むしろ、そうやって庭へ行くから花が好きなのかもしれない。
どちらにせよ、Aは王宮の中よりも外の方が好きだった。
……王宮は、どこか檻に似ている。
両親が亡くなるまで王宮の外で暮らしていたAには、その息苦しさがありありと感じられる。
Aからしてみれば、ここはあまりに異質な場所だった。
言葉には表せられない息苦しさに時折、呼吸が上手くできなくなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑪瑙(プロフ) - カエデさん» お返事が遅くなり申し訳ありません！そう言っていただけてとても嬉しいです(^^) ありがとうございます！！ (2018年1月6日 13時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - とても読みやすくて面白かったです！これからも読ませて頂きます！頑張ってくださいd('∀'*) (2018年1月4日 12時) (レス) id: f2c692053c (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - あんばーるさん» コメントありがとうございます！気付いたらいつの間にかダリューンの物語ができていました…笑 少しずつ更新していきますので、よろしくお願いしますm(__)m (2017年9月1日 13時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
あんばーる - アルスラーン戦記好きな者です！ すごく素敵なお話しでした！ダリューン沼は深いのではまっちゃいますよね(*´∀｀) (2017年9月1日 2時) (レス) id: 212817a7b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年6月21日 22時
