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飄々と言うギーヴにAは目を丸くし、次いで眦を吊り上げる。
「……ご冗談を」
「本気だが」
「ならば尚更です。ここはエクバターナの王宮。不用意な発言はお控えください。それに私は王太子殿下付の侍女。そのようなこと――」
「だが、消息不明なのだろう？」
容赦ない追撃に息が止まった。
動きを止めるAを見つめ、ギーヴが首を傾げる。
「おぬし、どうするのだ」
先刻の問いとは趣旨を変えたそれに言葉を詰まらせる。
これからどうするべきか――言い換えるならば、主のいないこの場所で何をすると言うのか。
アルスラーンのいない王宮に自分は必要ない。
それでも矜持と冷静さをかき集め、Aはギーヴを見上げた。
琥珀色の瞳が怒りにも似た感情に煌めき、美しく燃え上がる。
「……守ると、約束いたしました」
彼らの帰ってくるこの場所を。
彼らと――彼らを愛する、己のために。
「私が逃げ出すわけには参りません。……私が、信じなければ」
自分に言い聞かせているようにも聞こえる言葉にギーヴが目をすがめた。
「……まるで檻の中の花だな」
落とされた言葉に視線を上げる。
ギーヴが表情を消した、どこか失望したような顔でAを見つめていた。
「檻の中でしか生きられぬ花というわけか。……憐れだな」
憐れみよりは、むしろ白けたような眼差しだった。
唖然とするAから視線を外し、ギーヴは狭い空を見上げる。
「少なくとも、こんなところで死ぬのは御免だな」
「貴方様は……」
「大将軍の養女と聞いて、どんなものかと思ったが――ある意味、予想通りと言うことか」
納得したように呟き、ギーヴが再びこちらを向いた。
「これは純粋な疑問だが……空の箱を守って、何になる？」
言葉を失った。
表情を保つことすらできず、呆然とする。
そんな彼女を一瞥し、ギーヴはひらひらと手を振りながら去ってゆく。
その背を見送り、Aはよろけるように窓枠に手を掛けた。
――何がこれほどまで自分を動揺させるのか、よくわからない。
ただ、無視してはならぬ言葉。
しかし、気付いてはならぬこと。
信じていた何かが崩れ落ちてゆく気がした。
瞳を閉ざし、手を組む。
――あぁ、殿下。父上様。兄上様。
私はただ、貴方たちの無事を祈る。
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瑪瑙(プロフ) - カエデさん» お返事が遅くなり申し訳ありません！そう言っていただけてとても嬉しいです(^^) ありがとうございます！！ (2018年1月6日 13時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - とても読みやすくて面白かったです！これからも読ませて頂きます！頑張ってくださいd('∀'*) (2018年1月4日 12時) (レス) id: f2c692053c (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - あんばーるさん» コメントありがとうございます！気付いたらいつの間にかダリューンの物語ができていました…笑 少しずつ更新していきますので、よろしくお願いしますm(__)m (2017年9月1日 13時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
あんばーる - アルスラーン戦記好きな者です！ すごく素敵なお話しでした！ダリューン沼は深いのではまっちゃいますよね(*´∀｀) (2017年9月1日 2時) (レス) id: 212817a7b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年6月21日 22時
