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思わず固まるAの前まで来た男が顔を覗き込む。
「美しい髪だな。陽に当たったら溶けてしまいそうだ。さしずめ、月の精とでも言ったところか」
歌うようにそう呟く男にAは唖然とする。
片手にウードを抱え、肩には弓矢。ちぐはぐな組み合わせだ。
Aの様子に満足したように、男が隠していた顔を露にする。
こぼれ出た深みのある紅の髪に目を奪われ、その若さに声を失った。
戦場に似合う……否、それにしてはあまりに美しい紅色。
歳も、恐らくはダリューンより年下だろう。
ただ、纏う雰囲気はどこか老練としている。
おそらく、考えていることを読ませてくれない類いの人間だ。
「銀の月……いや、月ではないな。もっと透明な……玻璃？ 銀玻璃か。まるで透き通るようだ」
その男はAの髪を見つめ、しみじみと言う。
自分の髪の何にそんな興味を示すのかわからなかったが、Aはどうにか声を絞り出した。
「貴方が、先程の矢を……？」
「そうだが？ 麗しき銀玻璃の君。我が名はギーヴ。旅の楽士だ」
「楽士……」
何かの冗談かと思った。
あの矢の腕は、仮にも芸能を生業とする者のものではない。
疑念が胸の内で渦巻くが、Aはそれを顔に出すことはしなかった。
いつも通り、王太子の侍女としての顔を作る。
「非礼をお許しください。私は王太子付きの侍女、Aと申します。どうぞ、王宮へご案内いたします」
「王太子の侍女？ それがなぜ、このような場所に？」
馬の手綱を兵に預けるAにギーヴが首を傾げた。
Aは視線を落として答える。
「事情がありまして」
「ほぅ？」
「……ご案内いたします」
追及を逃れるため、Aはギーヴを促す。
どちらにせよ、ここで長々と立ち話をしているわけにもいかなかった。
敵を迎え撃つ準備を進める兵たちの動きを横目にAたちはその場を離れた。
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瑪瑙(プロフ) - カエデさん» お返事が遅くなり申し訳ありません！そう言っていただけてとても嬉しいです(^^) ありがとうございます！！ (2018年1月6日 13時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - とても読みやすくて面白かったです！これからも読ませて頂きます！頑張ってくださいd('∀'*) (2018年1月4日 12時) (レス) id: f2c692053c (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - あんばーるさん» コメントありがとうございます！気付いたらいつの間にかダリューンの物語ができていました…笑 少しずつ更新していきますので、よろしくお願いしますm(__)m (2017年9月1日 13時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
あんばーる - アルスラーン戦記好きな者です！ すごく素敵なお話しでした！ダリューン沼は深いのではまっちゃいますよね(*´∀｀) (2017年9月1日 2時) (レス) id: 212817a7b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年6月21日 22時
