21 ページ23
咄嗟に響いたアルスラーンの制止の声にAも反射的に声をあげる。
放たれた矢は馬に乗って駆ける少年を外し、近くの地面に突き刺さった。
その姿が夕陽に溶けるようにして遠くなっていくのを最後まで見送らず、Aは踵を返す。
城壁を駆け降り、アルスラーンの元へと走った。
「殿下！！」
全身ずぶ濡れとなり、地面に座り込むアルスラーンの前に倒れ込むように膝をつく。
「A……」
「お怪我はございませんか！？ どこか痛む場所は……っ」
「大丈夫だ。あちこち走り回って少し、疲れただけだ」
そう言って、アルスラーンは苦笑する。
Aは崩れるように頭を下げた。
「申し訳ございません……本当に申し訳ございません……！！ 殿下を危険な目に合わせてしまい……もし殿下の御身に何かあったら、私は……」
「顔を上げてくれ、A。おぬしは何も悪くないであろう？」
気を遣った兵がアルスラーンの肩に布を掛ける。
それをかき合わせ、アルスラーンがAの顔を見て笑った。
「それに、あのルシタニア兵から面白い話を聞いたのだ。あとでおぬしにも話そう」
「殿下……」
問題はそこではないのだが、それ以上言うことをAは諦めた。
どちらにせよ、アルスラーンが無事で良かった。
促されて立ち上がれば、ダリューンが駆け寄って来る。
「アルスラーン殿下、お怪我は！？」
「大丈夫だ」
アルスラーンが頷けば、ダリューンがもう影すら見えないルシタニア少年を追うように視線を地平線へと投げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑪瑙(プロフ) - カエデさん» お返事が遅くなり申し訳ありません！そう言っていただけてとても嬉しいです(^^) ありがとうございます！！ (2018年1月6日 13時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - とても読みやすくて面白かったです！これからも読ませて頂きます！頑張ってくださいd('∀'*) (2018年1月4日 12時) (レス) id: f2c692053c (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - あんばーるさん» コメントありがとうございます！気付いたらいつの間にかダリューンの物語ができていました…笑 少しずつ更新していきますので、よろしくお願いしますm(__)m (2017年9月1日 13時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
あんばーる - アルスラーン戦記好きな者です！ すごく素敵なお話しでした！ダリューン沼は深いのではまっちゃいますよね(*´∀｀) (2017年9月1日 2時) (レス) id: 212817a7b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年6月21日 22時
