19 ページ21
陽は既に傾き始め、夕空が不気味なほどに赤く染まるのが見える。
その最も赤く染まる空の下、Aはようやく城壁の西側に辿り着いた。
その付近では兵たちが慌ただしく駆け、城壁の上を指差しては登って行く。
それを見て、Aももつれる足を懸命に動かして城壁の上を目指す。
「A様！！」
途中、焦ったように名を呼ばれた。
振り向けば顔色を失ったパルス兵がAを追い掛けて来る。
「何故こちらに……！？ 危険です、お下がりを！」
「危険なのは殿下の方です！」
そう返し、城壁の上へ駆け上がる。
そしてそこに広がる光景にAは目を見開いた。
「殿下……っ」
押し出した声はかすれ、裏返る。
真っ赤な夕陽を背に城壁の隅に追い詰められているのは、ルシタニアの――アルスラーンとほとんど歳の変わらぬように見える――捕虜。
その幼さと、アルスラーンに向けられている刃の不釣り合いさに息を呑む。
「寄るな！！ ……この者がどう……なってもいいのか！！」
荒い呼吸の狭間に叫ぶ声すら、まだ子どもの域を脱していない。
こんな子どもまでも戦に駆り出すのか――その事実に絶句するも状況は何ら好転しない。
ただし幸いと言うか何と言うのか、アルスラーンは冷静だ。
事の重大さがいささか分かっていない節もあるのだろうが、落ち着いている。
どこかすがるように視線を巡らせ、パルス兵に混じるAの姿を見つけた途端、ほっとしたように表情を緩ませる。
「A……！」
その瞳をまっすぐ見つめ、Aは返事をする代わりに力強く頷いた。拳を握り締める。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑪瑙(プロフ) - カエデさん» お返事が遅くなり申し訳ありません！そう言っていただけてとても嬉しいです(^^) ありがとうございます！！ (2018年1月6日 13時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - とても読みやすくて面白かったです！これからも読ませて頂きます！頑張ってくださいd('∀'*) (2018年1月4日 12時) (レス) id: f2c692053c (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - あんばーるさん» コメントありがとうございます！気付いたらいつの間にかダリューンの物語ができていました…笑 少しずつ更新していきますので、よろしくお願いしますm(__)m (2017年9月1日 13時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
あんばーる - アルスラーン戦記好きな者です！ すごく素敵なお話しでした！ダリューン沼は深いのではまっちゃいますよね(*´∀｀) (2017年9月1日 2時) (レス) id: 212817a7b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年6月21日 22時
