【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ46)

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慌てて弁解するもルチルは相変わらず文句ありげでこちらを見ている。ノアールはクスクスと肩を揺らしながら二人の話に耳を傾けているようだった。

「違うんだよ！？ち、違うの！ルチルがかっこわるいってわけじゃなくてね！」

けれどルチルはそれに何も返事をしない。どうやら本気で機嫌を損ねてしまったようだ。どうしようとユーリが戸惑っていると、ユーリの横にいつの間にかノアールが立っていた。
　ユーリが驚きながらも顔を上げるとノアールは「簡単な治療だが終わった」とルチルの腹部を横目で見た。見ればたしかに布が貼られている。

「まあ、龍は事故回復能力はそこそこ高いからこれでひとまず安心だろう。あとはこいつが素直に休んでくれれば2，3日でそこそこ動けるようになるだろう」
「……ルチルちゃんと寝るんだよ！」
『俺は子供か』
「俺にとっちゃあまだ子供みたいなもんだけどな。まあ、ユーリおいで。ずっとここにいるわけにもいかないし、ひとまずお茶にしよう。聞きたいこともたくさんあるだろうし」

ノアールはそう言うと黒いローブを手に抱えて家のほうへと歩き始める。その際、背伸びをしてルチルの耳を軽くつまんで「ちゃんと休めよ」と声をかけていた。
　ユーリはそれに立ち上がる。

「あの、えっと……街は」
「ドランは知ってのとおり優秀だ。少なくともブロンの国の王宮騎士に任命されて数年のうちに王宮団長にのぼりつめるくらいにはな。王宮騎士の団長と言うとのは剣の腕だけで上り詰めることの出来るものじゃない。その場の状況を瞬時に飲み込む理解力、そして何が適切かをとっさに判断し指示できる冷静さが必要だ。あの場には適切だろう。別に俺がいてもいなくても大差ない。それに今はルチルの方が優先だったしな。
　ロイドも普段はあんなんだが、役に立つときはたつ。戦闘能力においても他の龍におとりをとらないし、あの自由奔放具合だ。感情に飲み込まれにくいから、まあ……その……うん。場を和ませてはくれると信じてる」

ロイドの説明が地味に不安を覚えるのだが、恐らく気のせいだとユーリは自分に言い聞かせておくとしよう。
　でも、確かにあの殺戮とした空気の中、全力でぼけてきた悠々自適なロイドである。大丈夫といわれて、同意せざるおえない。というか、絶対に大丈夫だと思う。ユーリは眠そうに瞼を下げているルチルの鼻の上をもう一度撫でて「後でね」と笑うと、ノアールの後へとついていった。