【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ24)

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ベルはユーリの手を引いたその瞬間ドランは大きく飛び上がり大剣を振りかぶった。兵との隙間を縫い、地面に突き刺さる。刹那、ありえないほどの突風が巻き上がり付近の兵は宙に飛び上がった。ユーリは「ひぃいい！」と悲鳴をあげ、ロイドは「お前、言った瞬間にやるなぁ」とどころなく間の抜けた声をあげた。
　ベルはユーリを横抱きにして、羽根を広げて空に舞う。続いてロイドも、大剣の風圧に押され宙に飛び上がる。

「ロイド！頼むぞ！」
「お前、今度覚えとけよ。高級酒おごってください」
「はいはい」
「ロイドさん、ベルくん！ドランさんは！？」
「全力で見捨てる」
「見捨てたわけじゃないでしょう！こういう作戦だったんですよ！」
「あり、そうだっけ」

何も変わらない彼らにユーリは怒鳴り散らしたくなった。しかし、彼らもこんなんでも真面目なのである。溢れそうになる感情を必死に堪えて、歯を食いしばった。
　すると緑色のひとみと目があう。彼は大剣を肩に担ぎ、目を細めてはにかんだ。

「ユーリさん！ルチルのこと、どうか守ってやってくれ」

それにユーリは目を見開いた。
　ああ、そうか……多分、ルチルはドランさんがいて、ロイドさんが近くにいたことわかってたから私を置いていったのか。多分、あのルチルの「ごめん」は自分の手で守ってあげられないこと、一番不安なときに怯えているときに傍にいてあげれないことに対しての謝罪だったのだ。
　ユーリは歯をくいしばる。ああ、本当に私はいろんな人に助けられてるんだ。その真実がユーリの胸を刺した。泣きそうなのをうんと堪え、ユーリはドランを見つめる。そして叫んだ。

「ルチルは……ルチルは絶対に私が守ります！」

その瞬間、地面にベルとロイドは着地し街の方に走り出した。

　それをドランは涼しい顔で見届けた後、怯える兵に目を向ける。彼らはひぃと銃をドランに向けた。

「……悪いと思ってる。俺を慕ってくれたお前らを裏切る行為は。だけど、俺は龍王様に助けられた。そしてブロンの人間たちの多くにののしられ、蔑まれた。だから俺はこの国を、権利を奪い権力者だけが意見を通せる、権利をもつこの国を、文化を壊す。それが、俺やロイド……ルチルの願いだ」

その瞬間、ドランの頬に緑色のうろこが浮かび上がった。そして緑色のひとみがわずかに滲み、頬に一筋の涙が、伝う。

「お前らといれたのも、案外楽しかった」