【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ14)

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魔法というのはとことん不思議なものである。
　まあ、確かにそれを知らないと生きてるように思えちゃうもんなと、ユーリはしみじみと感じた。
　その瞬間である。スターンとユーリの頭の上に、何かが飛び乗り、そして蹴り上げた。バランスを崩したユーリは後方に転び、次にロイドの顔面にユーリを蹴ったと思わしき生物が張り付く。ロイドは微動だにせず、その顔面にひっついた何かを引き剥がし、勢い任せに上方に投げる。そしてユーリがとっさに悲鳴をあげた。

「ロ、ロイドさん！猫！猫放り投げちゃだめですよ！」
「ねこ……？あ、ほんとだ」

ユーリを蹴り、ロイドに張り付いたのは黒猫だった。黒猫はすとんと何食わぬ顔で屋根に着地すると、ユーリたちを一瞥。間もなく不機嫌そうに屋根の上を走り抜けていった。
　それにユーリとロイドは顔を合わせる。

「……あの猫、Bacchusの看板猫じゃないですかね」
「……多分」
「ルナちゃんでしたっけ」
「……確か」
「あまり、いい状況じゃ……」
「ないな」

そのとき、すぐに答えは決まった。二人は顔を合わせて頷く。

「とっつかまえますか」
「ですね！」

　そして、現在に至るのだが……
　ユーリはおろおろと周辺を見回す。使えそうなものは特にない。
　やっと見つけたというのに、捕まえられないなんて……もどかしい。ロイドはじっと黒猫のルナを見つめている。するとルナはこちらに気付いたのか体を弓のように反り毛を逆立てた。シャー！と穏やかではない声。
　それにロイドがぼそりと呟く。

「……ありゃあ、嫌われたな」
「え、えええ……」

嫌われたらどうしようもないじゃないか。ユーリは思わず項垂れた。

「けどなあ、あの高さじゃ自力で下りれるか怪しいんだよなあ」
「ですよね」

確かに屋根は自分たちのずっと上にある。ロイドが言う限り、下りれるような場所は付近にはないそうなのだ。それならなんとか捕まえて、お店に戻したほうがいい。どうしたものかとユーリは考えた。
　すると、ロイドが何かに気付いたのか、ふらっとどこかへ歩いていく。ユーリはそれに顔を上げた。ロイドの行く先には……木。結構、大きな木だ。しかし、屋根に届くとまでは行かない。
　どうするんだろうと、ユーリはロイドをじっと見つめた。
　するとロイドは無言で、そくささ木に登り始めた。恐らく、何か考えがあるのだろう。