不思議な出会い ページ17
青々とした森を進むと、古びた鳥居と沢山の風車が見えてくる。
やはりここはがらっと空気が変わる。先程の暑さが嘘のように涼しく感じられる。
うるさいほどの蝉時雨が体中を包み込み、このままどこか違う世界に連れて行かれてしまいそうな気さえした。
前来た時は冷たく見えた風車も今日は静かに回っていた。
鳥居をくぐり、境内のほうへ向かった。何か目的があるわけではないのだけれど。
兄様は夏には魔法があると言っていた。
理由は分からないけど、懐かしくて、体中を包み込む暑さもどこか心地いい。
そして、体を突き動かす力をもっているんだって。
その魔法を信じて歩みの向く方へ行ってみればいいんだって。
境内はまた雰囲気が違ってどこか優しい。そろそろ少し休憩しようか。
兄様の入れてくれたお茶はとっても冷たくて、火照った体に染み渡る。
「ふう・・・」
「どうしたの?」 「わぁ!?」
聞きなれない声に驚いて、危うく水筒を落としそうになってしまう。
兄様以外の人になんて会ったことがなくて、うつむいたままとりあえず声を発する。
「え、いや・・・」 「ごめん、びっくりさせて」
兄様よりも少し高いけれど優しい声に少し安心して、顔を上げる。
目の前には同じ位の年の少年が心配そうな表情で立っていた。
ふわっとした黒髪に、大きな藍色の瞳が印象的だった。
真っ直ぐに私を見つめる瞳は綺麗に澄み渡っていて、見透かされているようで目をそらしてしまう。
「見かけない子だなと思ってさ、声かけちゃった」
「大丈夫。私こそごめん。少し驚いただけ・・・」
男の子はまじまじと私を見つめ続けた。しばらくして男の子は口を開く。
「髪、綺麗だね。真っ白でさ。」「え?」
「なんだか、本に出てくる妖精みたい。オレは真っ黒だし」
そういい自分の頭をくしゃっと掴んでみせた。髪なんて褒められたことなくて戸惑ってしまったが、少し嬉しかった。
「そうだ、君名前は?オレは藍(らん)」
そう言い彼は名乗った。こんな字なんだって書き表しながら。
まだ私には読めなかったけれど、また一つ素敵な字を覚えられた。命のこもった字を。
「私は、白(きよ)」
私も最初に覚えた字を地面に書く。
「君にぴったりのいい名前!」
「オレ、隣町に住んでてたまに遊びに来るんだ、水曜日にはここに来るから、また遊ぼう!」
キラキラと輝く瞳と高鳴る鼓動が私の首を縦に振らせた。
「約束な!」
これが少年との初めての出会いだった。
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リン(プロフ) - ねんねこさん» 返信遅くなり、申し訳ございません!!綺麗で儚く美しい文章を綴りたいと思い作った小説であったので伝わってとても嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ更新ももっと早くできるよう努力しますね!良ければこれからもよろしくお願いします!! (2018年11月23日 17時) (レス) id: 36ae7035f1 (このIDを非表示/違反報告)
ねんねこ(プロフ) - えっすごい面白いというか文が素敵…!花言葉等も凝っていて素晴らしいです!お気に入り追加しちゃいました…続き見たいです! (2018年11月6日 3時) (レス) id: b2f2509cb0 (このIDを非表示/違反報告)
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