七日目 紫陽花 ページ15
白(きよ)side
この頃よく雨が降る。
しとしとと響く雨音、少しじめっとした重たい空気。今は梅雨っていうらしい。
嫌いな人の方が多いって兄様は言っていたけど
このしっとりとした静けさの中で本を読むのが、私は結構好きだった。
今日もリビングの大窓の下、図鑑を床に広げていた。
まだあまり文字は読めないけれど。
これも星の図鑑。ベガ、デネブ、アルタイル。この図鑑が教えてくれた、夏の大三角。
本当は神様のお話なんだって。
夏。もうすぐ夏が来る。この長雨が終われば眩しい太陽が降り注ぐって兄様が言っていた。
夏になれば本物の星が見られる、それがとても楽しみだった。
そういえば、この頃の兄様はなんだか雰囲気が変わった気がする。
実験の後兄様が泣いていたあの日からか、兄様は
何かの絵本の気高い王子様のようでありながら、悲しみにくれる報われない魔女のようにもみえて、
それでいて、とても静かに微笑むお姫様のような妖艶さがあった。
「どうしたの、白？そんなに見ないでよ」
そう言い、笑う兄様の声に現実に引き戻された。ぼーっと兄様を眺めていたようだ。
「兄様って、王子様みたい」
そういうと、兄様は驚きと恥じらいの混じった表情で笑い、
「そんなっ、白、絵本の読みすぎだよ」
と誤魔化していた。
「それに、どちらかといえば僕は魔法使いだよ。きっと」
「そうかも、兄様は私に沢山の魔法をかけてくれる」
「色んな魔法か、それは良かった」
こんな他愛のない会話がなんだかとても嬉しくて、またこんな日々を尊く思った。
そう思えるのも私の王子様で、魔女で、お姫様で、魔法使いの兄様のおかげ。
そんなことをことを考えていたら、ふんわりと視界が明るくなった。
少し驚いて窓の外を見ると、空は微笑みかけるように晴れていた。
「おー、晴れたね。あっ！白、外に出てみようか」
「え、うん」
兄様に手を引かれて、外に出てみると少し湿っぽい空気と雨の匂いに包まれた。
そして目の前の空には大きな七色の橋がかかっていた。
「わぁ・・・！綺麗」
「虹だね！これは良いものがみれたね」
「うん！」
こんなものが見られるなんて、本当に兄様は魔法使いなんじゃないかって、
そんなことを考えて、少し可笑しくなって笑っていたのだった。
【紫陽花・白】
花言葉 寛容
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リン(プロフ) - ねんねこさん» 返信遅くなり、申し訳ございません！！綺麗で儚く美しい文章を綴りたいと思い作った小説であったので伝わってとても嬉しいですヾ(*´∀｀*)ﾉ更新ももっと早くできるよう努力しますね！良ければこれからもよろしくお願いします！！ (2018年11月23日 17時) (
レス) id: 36ae7035f1 (このIDを非表示/違反報告)
ねんねこ(プロフ) - えっすごい面白いというか文が素敵…！花言葉等も凝っていて素晴らしいです！お気に入り追加しちゃいました…続き見たいです！ (2018年11月6日 3時) (レス) id: b2f2509cb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
