［完］花束のかわりに一本の蘭を-part 2-【灰谷蘭】

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□side ran



『らっき〜』



Aはそう言って、俺の手を離してデッケー木に向かっていく。

そこの木はクリスマスになるとオブジェがたくさん飾られ「クリスマスツリーみたいになって綺麗なんだ」と前にAに教えてもらった。

一応、木を囲むように座れるベンチみたいなのがあってAはそこにちょこんと座る。



『涼しー』



去年の今頃は、プールにでも行っていた気がする。

この暑さにAが取り込まれないか心配になってたっけな。



『…蘭、さっきからぼーっとしてばっか』


「ンなことねーよ」



そう言って、俺も彼女の隣に座る。



『せっかくのデートなのに…』



不貞腐れている彼女を見るのも、なんだか久しぶりな気がした。



「楽しーよ？こんなデッカい木の下で涼むデートも悪くねーな」


『え、今のイジり？』


「かもな」


『むー…』



頬を膨らませて、目をジトッとする愛おしい顔。

そんな彼女をずっと見ていたいけど、見すぎるとまた怒られそうだから顔を逸らして前を向く。



















「…お前とこうやっていられんなら、俺はなんでもいい」



















そう、それだけで_____



















『私も。蘭とこうやって何もせずに、何も考えずにぼーっとする時間が好き』



ポン、と右肩が重くなるだけで俺は幸せを感じられる。



「…大丈夫か？」


『うん。治療は辛いけど…前の時よりは全然平気だよ。蘭にも会えてるし、慣れてるから』


「………そっか」





代わってやれたら、どんなにいいだろうか。

Aに降りかかる病気も、不幸も、全部全部_____俺に降りかかればいい。それで、コイツはただ笑って生きて欲しい。

そんなことを考えながら、彼女の頭を撫でた。



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