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84話 ページ37

ざあ、っ、と。背筋が粟立つ。咄嗟にAの顔を見た父親はAの顔色の変化を察して片眉を上げ、「見ていいのかい」とAへ問い掛けてきた。

リドルが柔和に微笑んでいるのが辛い。


「……どうぞ」


そう噛み殺したように言う様子に、父親が微かに微笑んだのが見えた。恐らく、間違いなく、弟に敗けた試合を父に見られるのが恥ずかしいのだと思っている。

ぐ、と、吐き気が強くなる。


「じゃあ、再生するね」


耐えられず、目を瞑り背もたれと肘掛けにもたれかかる。

昨日のことのように覚えている。どうしたら自分が居なくなってもリドルが1人で生きていけるだろうかと、必死に考えて出した結論だった。

そもそも自分が反撃するという選択肢に気付けたのもリドルのお陰だし、リドルにもその機会を与えてやらないといけないと思った。

Aがユニーク魔法を使ったあたりから、映像の雲行きが怪しくなってくる。


「リドル、ここからどうやって……」


父親の尤もな懸念に頭痛がする。食事なんてしていないのに、椅子から立ち上がりたくてそわそわして、笑いすら出てきた。

Aのユニーク魔法の発動した音が流れる。目を細く開けると、父親が食い入るように映像を見ていて、またすぐに瞳を閉じた。


「これ、ここ……見ていただきたいんです」

「どれ……?これ……?」



「これ、布団叩きです。Aとボクが、いつもお母様に叩かれてた形の」



リドルのその説明は何故か弾むようで。



必死に映像の音から意識を逸らす他なかった。それでも耳に入ってきてしまった、母親の真似をしている時の自分が、喋り方といい雰囲気といい結構母親に似ていて、モノマネの才能あるかもな、と必死に現実逃避を。



「……」



部屋の空気が張り詰めているのを肌で感じる。


早く終われ、と。終わっても始まるのは地獄だけれど、そう思う他なかった。


Aの敗北の宣言から少しして、映像が終わり。



沈黙が痛い。




「……ふふ、格好良いでしょう?A」


「……これ、は」


「ボクに、反撃の仕方を教えてくれて」


「……」


「お父様。……お母様へはAがやったので、お父様へはボクが……やらせていただいても、良いですか?対等ではないので」



胃がひっくり返りそうになるのを、ぐっと目を瞑って耐えた。

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功徳(プロフ) - オパールさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました🥰他の作品でもお待ちしてます🥰 (11月10日 20時) (レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - 2人ともかっわいい…。溶ける!素晴らしい作品を作ってくれて、本当にありがとうございますっ! (11月10日 20時) (レス) @page47 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - Shiroさん» ウワーありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいすぎる……😚😚😚好き…… (2023年1月14日 23時) (レス) @page17 id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
Shiro(プロフ) - 初めまして、コメント失礼いたします。素晴らしい作品をありがとうございました!!読み進めていくうちに心が抉られ揺さぶられ、感動の連続でした。心情を細やかに書き出すことのできる語彙力・文章力、私も見習いたいです。本当に素敵な作品でした!✨ (2023年1月4日 2時) (レス) @page47 id: 033ac6eba0 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - チョコドーナツさん» お読みいただきありがとうございましたすぎる……!!!🥰🥰🥰タイトル回収のとこ盛り上がると思ってたのでめちゃ嬉しいです🥰🥰🥰ヤッター‼️ (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたし | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年11月25日 7時

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