episode89 スタートラインの手前 ページ45
何でAなのかは知ってる。
あんなに生意気だったこいつを、この兄妹をここまで素直にしたのは、Aの得意なことというか、Aだからできてしまうことだ。
無神経とお節介。
「でもまぁ、すげえよな。A」
「……は? 何よ急に」
「んー? いや、なんかさ……」
言葉は続かなかった。
何がすごいのかなんて、おれにもわからない。
けど……。
「そうやって考え込むあんた、気持ち悪っ」
「お、お前マジかわいくねえ……!」
「そんなの知って……」
「おい春秋! 泰未はかわいいに決まってるだろ!」
唐突にAが会話に割り込んできた。
今までのこと聞いていたわけじゃないのに、何でこうも躊躇なく会話に入ってこられるんだろう。
「ちょ、Aやめてよ、恥ずかしい……」
俺のときとは全く真逆の反応を見せる泰未。
俺のことは目吊り上げて睨む癖に、Aには笑顔で接するとか。なんて生意気な奴なんだ。
そして、なんで俺はそんな奴に土産を買ってきたんだ。
「あぁ、もう!!」
「ちょ、春秋うるさいよ。いきなり叫ばないで」
「もうおれのの心の拠り所は遥だけだよー!」
「え? ええ!?」
困惑する遥を縋るようにして抱きしめる。
遥が遠慮気味にポンポンと2回ほど頭に手を置いた。
「遥! 春秋から離れないと、春秋菌がお前を駄目にするぞ!」
「そうだよ遥。あんまり甘やかしちゃだめだよ」
やっぱり、おれの癒しは遥だけだ。
「――――おい。くだらねえことしてんなら帰るぞ。もう5時すぎてっし」
おれたちが騒いでいるその少し横から、多少苛立ちの含んだ弘の声が飛ぶ。
けどおれたちは、それを無視して会話をつづけた。
「……ったく」
そしてしばらくするとため息をついて、鞄から本を取り出す。
「ちょーっと弘! 読書なんかさせないっ、ぞー!」
「うわっ、飛び掛かってくんなようっとおしい!」
「そーれ」
「って、おい優真! お前も邪魔だ、どけ!」
優真とおれで弘に飛び掛かって、弘がひとりの世界に入っていくのを阻止する。
そんな様子を、バカにしたような笑いで見ているAと、困りながらも楽しそうにしている遥と。
それから……。
「まったく、ガキなんだから」
憎まれ口を叩きながらも、口元に笑みを忍ばせる泰未。
「そうやって、笑ってりゃいいのに」
「ん? 春秋何か云った?」
優真がこちらに顔を向ける。
「……なーんでもないっ!」
何て云ったのかなんて、自分でもよくわからなかった。
episode90 冬休みには何をしよう→←episode88 跳ねる
3人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葉奈(プロフ) - 萌菜さん» いつもいつも本当にありがとうございます!!すっごい嬉しいです!がんばります!!! (2013年11月17日 13時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
萌菜(プロフ) - 私やっぱり葉奈さんのファンです!1,2と一気に読みましたが、最っ高に面白かったです!! (2013年11月17日 10時) (レス) id: c538a33189 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» おう! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - うちわさん» ありがとー!がんばるね!!これからも読んでやってくれ(( (2013年11月13日 19時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» そう?私は葉奈を応援してるからね!誰がなんといおうと←更新楽しみに待ってるね! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2013年9月2日 17時