19.守れなかった誓い ページ20
「ごめん、先生…」
『虎杖、くん……」
私は領域を解除した。そこから宿儺の気配が無くなっていたからだ。なぜ今なのか理解出来ず声を荒げる。
『なんでっ!何で今戻ってくるのよ!!』
「えー!!俺なんでそんな怒られてんの!?」
『まだ体、治せてないのに!!』
「うん、知ってる」
虎杖君は優しく笑っていた。
全てわかっていると言いたげなその顔に、もう責める言葉が見つからない。
「虎杖お前!」
「それでも先生や伏黒が傷つくところ、見たくねーんだ」
『嫌、ダメよ!ダメだから!』
私はまた、守れないの?
あのときの様に、また私は何もできないの?
そんな絶望の黒い渦が私を飲み込んでいく。
「ごめん、俺、もういくわ。もっと先生と、皆んなと遊びたかったな……」
その言葉を最後にドサっと倒れる音がした。
虎杖を抱える恵を私はただただ見ていた。
きっと恵も泣いているのかな。
『私、また……守れなかった』
その場にうずくまり、今も降り続く雨なのか涙なのかわからないぐらい、泣きじゃくった。
***
それからはどうやって高専へ帰ってきたのか思い出せない。
心臓がポッカリ開いたままの虎杖君を、冷たい台の上に寝かせた。まるで私の心臓も一緒に空いてしまったようだ。もう涙の一滴もでやしない。
ヴィーンとドアが開く。
振り向かなくても誰が来たのかなんてすぐにわかる。
『ごめんなさい』
「どうしてこうなったんだ」
『私がついていたのに……』
「伊地知、説明しろ。誰の指示だ」
そんなの分かりきった事じゃない。今更伊地知を責めたって何も変わらない。
『もういいよ悟。全員殺そう』
もう耐えられない。
また私は、失った。
夏油くんのような人を生み出さないために、悲しむ人がいない世界を作りたかった筈なのに、私は何も出来ない現実を突きつけられたんだ。
守るより壊す方が何倍も楽なのだと思い知らされる。
今ならもっと夏油くんの事、理解できるような気がした。
ーーーーそれも今更だけれど。
「Aのせいじゃない!僕が悪かった。ごめん。一人にして……」
悟の体温さえ感じられなくなるぐらい、体は冷えて麻痺していた。
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作者名:yoku | 作成日時:2022年6月26日 16時