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12.僕は何も知らない(2) ページ13

伏黒side



ほんの出来心みたいなもので、意地になってついに聞いてしまった。俺だって、知りたい。




俺が初めて会った五条先生はまだ10代で、その頃の先生の側にはAさんはいなかった。


イケメンアピールをしてくる先生に鬱陶しさが溜まったある日、彼女もできねー癖にって言った事がある。その時初めて知った。


"「許嫁がいるんだ」"


まさかの発言にその時は信じなかった。また適当な事を言っているんだと思っていた。

だけど、あの日、Aさんを連れてきたあの寒い冬の日、その言葉が本当だったと知った。








そのAさんの過去を今初めて聞かされた。きっと殆どの高専の人たちが知っている事だろう。それだけ大きな事件だったから。なのに、俺だけ知らなかったなんて…



『黙ってて、ごめんなさい』


なんで謝ってんだよ。たった半年だけど、その間見てきたあんたは、真っ直ぐで、人の為に動ける人で、俺や皆を見守ってくれるような存在だとわかっている。あれ、じゃあなんでAさんは呪詛師になったんだ…


「恵、Aは…」

『いいのよ』


俺がしばらく俯いて考えを巡らせていたせいで、二人は心配しているような、Aさんに限ってはとても辛そうな顔をしていた。


『首謀者だった彼…夏油君と私は高専を去った。もう10年ぐらい前の話よ。みんなを裏切った。だけど、もう同じ結末を誰にも見せたくないと思って、呪術師が苦しむ世界を変えたくて今ここにいる』


10年。ちょうど五条先生と出会った頃。
あの時、先生はAさんを失ったのか。
俺、ほんとに何も知らなかったんだな…


ふと五条先生を見ると、優しく微笑んでくれた。先生にとってもいい話ではないはずなのに、堂々としていた。
そのあとAさんを見る。Aさんは、俺より斜め下に目線を下ろし、今にも涙が流れ出すんじゃないかって顔をしていた。




するとタイミングがいいのか、窓ガラスがバリンッと割れる音がする。


見上げると呪霊が飛び出してきて、一瞬身構えた。


「待って」


五条先生の声の後、程なくして呪霊は消失した。


『無事に終わったようね』


何事もなかったかのようにAさんは笑ってそう言った。
俺はまだ何も言えてない。返せてない。


「あのっ!俺…」


『さぁ恵、みんなが帰ってきたらご飯よ?何食べたい?もちろん悟の奢りだからね』

Aさんと五条先生は立ち上がって俺を見た。いつもと変わらず。
この二人は、どれだけの事を乗り越えてきたんだろうか…

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作者名:yoku | 作成日時:2022年6月26日 16時

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