11.僕は何も知らない(1) ページ12
虎杖君と野薔薇ちゃんが廃ビルの中へ入って行った。
その後姿を眺めながら残された私たち3人は、すぐそばの縁石に腰掛けた。
「やっぱり俺も行きますよ」
『いや、それなら私が…』
「無理しないの。二人とも過保護だね」
私と恵の提案は一瞬で消された。
確かに虎杖君には呪具も貸し出しているし、宿儺はきっと出てこないと思う。その程度の呪霊。
だけど野薔薇ちゃんの力量は私はわからない。
もし万が一、何かあったらって考えてしまう。
「やばいと思えば助けに入るから、それまで待っていよう」
悟の言葉にはいつも安心感がある。最近、よくそれが伝わるようになった。
(あの日から、さらにあなたは強くなったみたいね)
「そういえば、昨日虎杖からAさんの事を聞かれました。天女って何?って…」
しばらくして恵が話始めた。
なぜって思ったけど、すぐ宿儺が言ってたからかと思い出した。
『別に隠す事じゃないし、好きに答えてくれたらいいわよ』
「いや、虎杖に聞かれて気付いたんですけど、俺も良く知らないなって思ったんです。二人のことも、なんとなく知ってますけど、ふわっとした部分だけなんですよ」
恵がいつになく真剣に話すので、一瞬鼓動が速くなる。
これは悪い意味で。
『今度、話そうか。今恵にだけ話しちゃうと不公平でしょ?』
「まぁ、そうですけど…」
『え、ダメ?』
歯切れの悪い返事をする恵に戸惑う。
「恵は拗ねてるんだよ。皆より先に知り合ってるのに、一緒のように扱われるのが嫌なんだよねー?」
まだまだお子ちゃまだな、と恵を煽る悟だが、恵はそれに対して反論はしなかった。
『何が一番聞きたいの?』
恵の顔を覗き込む。
「……どうして2人は離れていたんですか?」
きっと、ずっと気になっていたんだろう。目を少し逸らしながら聞いてきた恵の様子を見ればが今まで聞く事を我慢していたんだろうと伝わってきた。
もう隠せないだろう。
私は恵越しに悟を見た。
黙って頷き返す。
『"百鬼夜行"って言えば、伝わるかしら?』
思いもよらなかったのだろう。目を丸くしてこちらを見てきた。
『私はね、百鬼夜行を企てた人の仲間だった。いや、その組織をまとめている側の呪咀師だった』
「それって…」
恵はこれを聞いたら、がっかりするのかな。
私のことはもう慕ってくれなくなるのかな。
そんな不安を抱きながら、いつまでも隠せないと覚悟を決めた。
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作者名:yoku | 作成日時:2022年6月26日 16時