【文豪】 参謀と、黒の時代。《第２章》 【ストレイドッグス】

大人二人の内緒話 。 ページ10

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「ーーー太宰、此れで良いのか？」

「お陰様でね。」



Aは蜂蜜飴をまるで太宰を殺そうと云わんばかりの目で噛み砕いた後、酷く面倒臭そうな顔で黙って店を出て行った。

マフィアの拠点までの道を果たして覚えているだろうか、不安なところだったが太宰にとってはどうでもいいようだった。

４杯目となる蟹缶を摘みながら、意味有りげに笑う太宰を織田は横目で見つめた。


ーーー事の発端は、いつものように織田と太宰、そして此処には居ないがマフィアの情報員である坂口安吾を交えて酒を酌み交わした時のことだ。

普段は中身のない話題を酒とともに朝まで交わす、と云った時間だったがその時は違った。

太宰が最近拾ってきたと云う“異能力者の少女”に話題は移った。


曰く、彼女は非常に強力な異能を持ったが為に利用され、あまりにも哀れな思考を持ってしまっているのだと。

だからこそ、彼女のそんな固定概念をぶち壊す為に、彼女に助言をして欲しい、と。


「中也だったらきっと、彼女に『生きる価値』を与えてくれるだろう。

けれどそれだけじゃあ、遅かれ早かれ彼女の精神は壊れる。だから先ずは、彼女の思い込みを壊す必要がある。」



彼女は純粋だ。他人から云われた言葉をそのまま鵜呑みにしてしまうくらいには。

だからこそ、今回織田に云われた言葉を聞いて自分の考えを変えるだろう。


ーーー異能以外にも、自分に生きる道があるかもしれない、。



「____だが、太宰。
何故そんなに彼女に拘る？確か、お前には別に部下が新しく出来たと聞いたが。」

「嗚呼、“芥川君”か。

私が彼に見出したのは、それこそ“異能力”。それだけだ。」



慈悲の欠片もない言葉。
そこまで云うと、最後の蟹を口に入れ、何処か遠くを見つめるように前を見据えた。

それは、太宰がこの世界のもっと奥深く____深淵を見つめているようなそれで。



「私と彼女は自分の生についての考えが似ていてね。

もし、彼女に生きる価値と云うものが見つけられたならば____」



ーーー若しかしたら、私にも生きる価値と云うのが見つかるのかもしれない。



ただ、それだけだよ。と太宰は静かに笑った。




嗚呼、どうにも自分より幾つも歳下の二人は。

得体の知れない闇を抱えているのだろう。




「(____ただ、彼女は随分と“昔の自分”に似ている、)」



果たして、彼女の悲壮的な考えを変える事は出来ただろうか。




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夜道にはご注意を 。→←蜂蜜飴と御礼 。

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