見透かされているような 。 ページ7
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は?と素っ頓狂な声がAから漏れる。
太宰は、織田の隣の椅子に腰を掛け、先程注文した蟹缶を摘んで食べていた。
____完全に傍観体制に入った太宰を横目で軽く睨むと、改めて目の前の織田を見つめた。
「お前の事は、太宰から少し聞いた。
他人の生命を何とも思わず、まるで塵を処分するかのようにただ無感情に人を殺していくと。
確かに、そんな輩はマフィアにはごまんといる。しかしお前はそれだけじゃない筈だ。」
『....それだけだよ。』
「嘘だな。」
ーーー太宰から聞いた話から察するに、お前は人の生命と云うものは脆く、くだらないものだと思い込もうとしているようにしか思えない。
真っ向からぶつけられた言葉に、思わず息が止まる。
会って数分も経たぬ内に彼は、見透かしていた。それはきっと前々から太宰に話を聞かされていたからなのだろうが、
なぜか、それがとても怖かった。
全てを見抜きそうな、悪意のないその言葉がとても。
『....別に、物心つく時からこんな扱いされてから、本当にくだらないと思うしかないでしょ、』
「それもそうだな。」
『___何が云いたいのか、よく分からないんだけどっ』
あっさりとそれを肯定した彼の真意が益々読めない。
助けを求めるように太宰に視線を移すが、彼はどこ吹く風。目を合わせてもくれなかった。
「そこで部外者である俺から一つ案なのだが、」
ーーー異能を使って人を殺さなければいいんじゃあないか?
何とも簡潔で単純な言葉。
肘をカウンターテーブルにつきながら、酒杯を傾けAの答えを待つ織田を、まるで奇妙なものを見るかのような目で見つめるA。
___つくづく、この組織には自身が想像もつかないような“変わった”人間が集まっているらしい。
ーーー出来る事なら、もうとっくにやってる。
「人を殺せば殺す程、お前はお前が最も忌み嫌う《道具》としての存在に近付いていくだろう。
生命の重みを忘れ去った人間は皆、誰かの《道具》として成り果てる。
____異能を使わずに、お前に何が出来るか一回考えてみると良い。」
お前には未だ、時間は沢山ある。
太宰が、何も云わずに静かに目を細めた。
「もっと周りを良く見てみろ。
太宰の予言は良く当たる。異能以外に生きている価値を与えてくれる人間は、若しかしたら既に会っているかもしれない。」
その言葉に、とても心当たりがあって。
つくづく奇妙な人間だと、内心思った。
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時