迷い子の、手を引いて 。 ページ28
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『……あっれ、中原さん何やってるんですか』
「それは此方の台詞だ、馬鹿野郎。
手前が迷子になったと太宰の野郎から云われて、俺がわざわざ迎えにきてやったって云うもに……手前は呑気に街中で菓子食ってるしよォ」
苛立ったようにAの手を引いて、もう夕陽が輝く街を歩く。
Aが眩しそうに目を細めた。
最早怒る気力もない。呆れたようにため息を吐いた中原を見て、Aはきょとん、と中原を見た後、不思議そうに小首を傾げた。
『……迷子って、私迷子になんかなってませんけど』
「はァ?太宰が手前が……」
『いや、私はただ太宰さんに何とも狂気極まる本の購入を頼まれたんですが、当然の如く未成年には売れないと云われまして。
仕方ないんで、中原さんに貰った“お小遣い”で蜂蜜菓子を制覇しようと思いました。』
「何処から突っ込んで良いのかわからねェが、取り敢えず俺が太宰にからかわれたって事だけは理解した。」
中原の怒りの矛先が太宰に向いた事を確認すると、Aは安堵の息を吐いた。
中原を怒らせると、かなぁ〜りキツい仕置きが来ることは身を持って体験済み。
なんだかんだ云いながら、結局太宰の言葉を信じちゃうから、太宰の嘘に振り回されるんだ、とAは少しだけ呆れた。
『まぁ…取り敢えず、』
云いながら、軽やかに地面を蹴って中原の隣へと跳ぶ。繋がれた手は変わらず。
『私、見た目はこんな子供ですけど、拠点までの帰り道程度は覚えてますよ。失礼な。』
「見た目って云うか中身もだろ。
_____前に俺の前でわんわん泣きじゃくってたのは誰だったかなァ?」
『……卑怯者。』
痛い所を突かれて、顔をひきつらせる。
蘇ったのは、手袋を貰った日の事。左手にはめられた手袋に視線を移して、中原は軽く笑った。
ーーーまるで、兄と妹のように夕陽を背に歩く姿は、最初に出会った時とは思えぬ程自然で。
自然と繋がれた手が、まるで迷い子を引くそれと同じで。
Aは、気付いたように繋がれた手をじっと見つめ。
『______矢っ張り、私は、』
此処で、貴方達と共に生きたい。
《道具》として扱われるのではなく、
生きる価値を認めてくれた貴方の云う通り。
無言になったAの様子を感じ取ったのか、中原は振り返る事もなく、ただ静かに歩きながら反対の手でAの頭を軽く撫でた。
Aは目を閉じて、少しだけ笑った。
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その手を伸ばし、踏みにじる 。→←迷い子は、何をやっている 。
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時