迷い子は、何をやっている 。 ページ27
.
やけに荒々しい足取りと、それに伴って揺れる外套。
お洒落な帽子とその端整な顔立ちが相まって、通行人がちらりと振り返る。
赤茶の髪を揺らして、中原は視線を忙しなく動かし、面倒のかける“迷い子”とやらを捜していた。
「チッ…太宰の野郎…」
思い浮かぶは、つい1時間程前のこと。
___________
________
_____
__
「いやぁ、彼女の働き振りを見ていたら私なんか必要ないんじゃあないか、と思ってね。
彼女を置いて帰ったら、何とまだ帰ってきてないと云うじゃあないか。」
へらりと笑う太宰の顔面に穴をぶち開けたい衝動を抑え込み、中原は構えた拳をぐっと握りしめた。
その様子を見て、益々太宰の笑みは濃くなる。
「中也、迎えに行ってあげなよ。」
「はァ!?なんで俺が…!」
「Aは君の部下だし、生憎私は此れから諸事情で、首領の所へ行かなくてはならない。
ーーーきっとAは私より君の方が色々と良いだろう」
太宰の意味深な言葉に、中原は怪訝そうに顔をしかめる。だが、こんなに回りくどい云い方をする時は、太宰は決してその言葉の意味を教えてくれる事はない。
返事の代わりに、盛大な舌打ちをして、かけてあった外套を羽織って部屋の外へと荒々しく出て行った。
「ーーーなぁんてね。」
太宰の呟きは、中原に届くことはなかった。
_
___
_____
_______
毎度毎度、太宰に振り回されるのはいつもの事で、太宰と“相棒”だなんて関係になってからはその頻度は右肩上がりで。
内心ため息を吐きながらも、Aを捜すが一方に見つかる気配がない。
「まァ、街中から離れた所で帰り道が分からなく右往左往してそうだからな……向こう側に行ってみるか、」
街中を通った先にある、離れた場所も捜そうかと、より一層人通りのある道へと歩みを進める。
一応はマフィア。軍警に顔は割れてはいないものの、余り長居するのは良いものではない。
逃げた、だなんて考えはAには無いに等しいだろう。あんなに嬉しそうに笑う彼女が、今更マフィアから逃げる事はない。
「(____これは時間かかりそうだなァ)」
面倒だ、と心底思いながらも、街中を進んで行くと、
『……うええ、売り切れなんですか…!?』
「…はぁ、」
とても聞き覚えのあるソプラノの声が聞こえ、どうしようもなく頭を抱えたくなった。
奴____Aの片手には何やら蜂蜜色をした氷菓子があった。
一瞬にして彼女が何をしていたのか悟った。
.
2069人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時