涙はほろりほろりと 。 ページ18
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「……どちらさん?」
「俺だ。____この前の時の礼を云いに来たぜ、折口。」
深夜、もう日付はとっくに変わっておりもうすぐで朝を迎える、と云った時間帯。
中原は、一人地下牢へ行き、牢の中でいつもと同じように足を組んで座っていた折口に声をかけた。
自身が寝る時間など無いに等しいが、どうせ明日は緊急でもない限り仕事は入っていない。
泣き疲れて寝てしまったAを自身の部屋へ置いて、中原は折口に___礼を云いに来たのだ。
「あぁ…Aちゃんの手袋の件やな。
気にせんでええよ、その様子だとAちゃんは喜んでくれたみたいやしな。」
「嗚呼。手前に頼むのは、些か気が引けたけどなァ」
「なんやそれ酷ない?」
もう朝になると云うのに、全く疲れた様子を見せない折口を見て、やや違和感を持つ。
毎日毎日、マフィアからの尋問の日々だと云うのに、全く根をあげる気配もなければ、いつものように笑っているだけ。
中原は礼こそ云っているものの、本当は折口を太宰と同様に苦手としていた。
底知れぬ何かが、どうしても気味悪く感じてしまって仕方がないのだ。
中原は、牢の格子に背中を持たれかけて、折口に背を向けるように話し出した。
「それにしても便利だなァ、手前の異能は。
ーーー“自分達が求める異能を持つ異能力者を捜す”事まで出来るとは、」
「だからこそお宅の森さんはボクを警戒しているんやろ?」
「違いねェな。」
折口が首から提げている手帳を掲げて笑う。
Aの手袋を創り出す事の出来た異能者は、折口の【死者の書】によって捜す事が出来たのだ。
Aの異能の欠点を懸念していた中原が、折口に頼むのは正解だったようで。嫌がる様子もなく、Aの為ならば、と喜んだ様子で異能を使っていたのを思い出す。
そこで一つ浮かんだ疑問を、中原は折口へと問いかけた。
「ずっと前から思っていたんだが_____」
ーーー手前は何故、Aを気にかける?
その質問に、折口の笑みが一瞬消えた気がした。
「なんでやろうなぁ、…強いて云えば、此れがボクの義務であり、ボク自身の自己満足にしか過ぎないのかもしれん。」
中原クン、
「ーーーAを、よろしくな。」
深い青の瞳は、ただただ深海の如く。
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時