初めて貰った贈物 。 ページ16
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普段ならば。
Aの左手に触れた物は、Aの意思関係なく壊れていく。それはあまりに物理的法則を無視したAの強力過ぎる異能故に、コントロールし辛いと云うのが大きな原因で。
多少なりとも、破壊の侵食を遅らせる程度のコントロールは出来なくもないが、それでも壊れる点では同じで。
『____うそ、』
崩れる様子もなく、ぴたりとAの左手にはめられている手袋を見て、Aは気怠げだった紅茶色の瞳を大きく見開いて、信じられない、と云った風に声を震わせた。
Aの異能に例外はたった一つを除いてない。触れるもの全て壊してきたというのに。
「それはポートマフィアが管理している異能力者の中にいた、太宰の野郎と同じような、“異能を通さない物質”を作り出す異能を持つ女に作ってもらった。
____とは云っても、作るのには大量の気力と体力が必要みたいでな。それが最初で最後だ。大切にしろよ。」
前々から森も懸念していた、Aの異能の唯一の欠点。今までは、Aに必要最低限の時しか物に触れるなと命じ、任務の時以外では左手に細心の注意を払えとしか注意出来なかった。
勿論、慣れているAにとっては左手で“うっかり”何かに触るなんて事はなかったが、人生何が起きるかわからない。
そんな時に中原が森に頼んだのだ。
ーーーAの異能を制御出来る物が欲しい、と。
幸運な事に、異能力者同士の戦いの時の為に捕らえておいた“反異能物質”を作り出す異能力者が居たお陰で出来たのがその黒手袋。
中原は、珍しく驚いた様子のAを見ようと顔を上げると___
「っ!」
『.........』
驚いた表情のまま、自身の左手を見つめるAの大きな瞳から、つーっ、と伝う雫に。思わず中原は息を呑んだ。
彼女の紅茶色の瞳から一雫流れ落ちたそれは、
_____彼女にとても不似合いなほど、綺麗な涙だった。
その涙の訳は、一体何なのか。それはきっと中原にも太宰にも、織田にだって分からない。
ただ一人の少女は、涙に顔を歪める訳でもなく、嗚咽を漏らすわけでもない。
静かに、“何かを失う事のない”自分の左手を見つめて。
静寂が訪れた室内に、二人の男女は何を思うのか。
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時