君だから

fantasize 2 ページ43

「無事、終わった…」

「なにが？」

「今日…」


なんか、ムズカシイコトしたっけ？

一日中一緒に仕事してたけど。

「良かったね…」

と、言いながらも腑に落ちない。


「何かあった？」

「なかった…」

「え？」

「なんもない、いい日だった…」

「疲れてる？」

顔をのぞきこむ。


めちゃくちゃ疲れてるよ…って言いながら強く唇を押し付けられた。


「ん…」



強く抱き締められたまま、何度もキスを繰り返す。唇が離れたと思ったらまた重ねる。

そんな繰り返し、が、ようやく落ち着いて。
またぎゅうっと俺にしがみつくから。

「はっ…、どした？」

息を整えながら、両手で優しく照の頬を包む。




「ふっかがどこかへいなくなる夢を見て」


「夢？」


「必死に追いかけるけど、めちゃくちゃ速くて追い付けなくて」


「俺足はやっ！」

アハッて笑うけど、照は真剣。

「俺の手を振り払った…」

俺の手をぎゅっと握る。

「すごい力で振り払って、俺のこと見ないでいなくなった…」

上目遣いで抗議してるけど


「それ…夢だろ」

「夢でもやだ。絶望で死ぬかと思った」

「大袈裟」

抱きついてくる大型犬の背中を優しくさする。


「ごめん」

謝る必要はないけど謝る、優しいな、俺。


鼻先が触れ合う。照の息づかいを感じる距離で
そんな身に覚えのないことで責められる俺って。

「普段から不安にさせるからあんな夢、俺が見るんだ」

うーわ、俺のせいかよ。

「はー？もう、ごめんって言ってるじゃん…」

しつこさが、ウザ可愛いと思いつつ。
わざと照の腕から逃れようと、力をいれる。

「あ、ほら、そーゆーとこ」

逆にもっと力を込めて捕まった。


逃げられないって教えてやるから。

小さく呟いたと思ったら、身体が一瞬浮いて、あっという間にベッドに落とされた。



さっきより激しいキスの雨が止まない。
「待って、待てってば…」

抵抗してみるけど照の大きな手のひらが、慣れた手つきで敏感なところをすぐに探り当てる。

「わ…っ、あ…、ん…っ」

ぎゅっとシーツを掴んで声を我慢する。

強く握りすぎた指を、優しく照の手がほどいて指先にキス。

「ふっか」

「ん…」

「俺と居てよ？」

絡めた指から伝わる温もりを、愛しいって思う気持ちが、形で見えたらいいのに。


そんなこと思いながら。

「ずっと居るよ」


って。

現実の俺は

照の望む言葉を言う。

照に抗えない。


照に、甘過ぎる。

その分、
夢の俺は天邪鬼、なのかもね。

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