君だから

美味しい時間 absk version ページ32

楽屋に誰もいないね。確認してから。

ギュッってバックハグする。

「わぁ！」

読んでた本を落とす。

「佐久間！ビックリした…」

「驚いた？」

「イヤホンしてたから」

ワイヤレスのイヤホンが床に落ちてる。


「うわっ！ごめん！壊れてないかな」

「大丈夫でしょ、落ちたくらいで…」

拾ってケースにしまう。

「待っててくれたの？」


上目遣いで阿部ちゃんを見つめてみると。


「は？ちがうし！本を読んでたら皆帰っちゃっただけ！佐久間収録とか知らなかったし！」


ツン発動。


「俺収録って知ってたんだぁ！」

「…」

しまった、という表情をしながら、少し赤くなる。

相変わらず嘘つけないね。

「帰ろ、なんか食べてく？」


「…うん…、あ。」


楽屋の隅にある小さな冷蔵庫から、何かを取り出す。


「佐久間、これ、」

小さなケーキ。


「めっちゃかわいい！」


「誕生日だろ？」


「ありがとう！」

「俺、作った」

マジっ！

「俺、阿部ちゃん食べれるの！」

「変な言い方すんな」

「阿部ちゃんの手作りを！」

小さなカップのチーズケーキは、ラズベリーが入ってて、少し甘酸っぱくて。



「ツンデレ阿部の味がする！」

「なんだそれ」


「めちゃくちゃ美味しいってこと！」

また赤くなって、照れてる阿部ちゃん。

「うまー！」

「良かった、へへ。結構うまく出来たんだ」

はにかんで笑う。

「おめでとう」

何回言われても嬉しい言葉だけど。

大好きな人から言われるのって最高。

「ありがと！」


そっと手を握る。



「俺の為にありがとう、嬉しい」

「や、番組で作る予定だから、練習も兼ねて！」


ツンデレ！好き！


「もっと食べたい」


「ごめん、１個しか…、また作るね」


「やだ。いますぐ食べたい」


「えー、ないもん」


「…食べたいな」


握る手に力を込めて。
反対の手で頬を撫でる。

まっすぐ瞳を見つめると。

少し緊張した表情も。
赤くなって潤んだ目も。


愛してる。


少しずつ距離を詰めるから。
ゆっくり瞳を閉じてね。

美味しい時間2 absk version→←全部きみのため

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す