6 ページ6
火の燃料は勿体無かったが手探りでやれるだけの自信がなかったA。
慎重に糸の太さ細さから見てどんどんと作り上げていく。
失敗とねじれを繰り返しながら、一山を一本の糸にしてしまったらあとは布をおるだけ。
布はそもそも横糸と縦糸で構成されている。
ここにある植物の種類はバラバラであるため、明日は麻をもっと持って来なくては。
「ヘンプと間違えないようにしないと。」
「何と間違えないようにしないだって？」
「…聞いてたの？」
「当たり前だ、覗きはしねえが緊急事態がこれ以上増えてたまるか。」
扉の外で腕組みをして空中を睨みつける姿が容易に想像がつくA。
くすくすと笑いながら、どんどん編んでいくA。
中で何をしているか知らない千空にAは穏やかに話しかける。
「カラムシっていう植物を持ってくれば麻布を作れるなと思って。」
「まさか今作ってるのか？」
「ううん手元にあるのは種類がバラバラだから、明日どこに生えてるかだけでも探せればと思って呟いただけ。」
「そうか。で、なんだヘンプって、聞き間違いじゃなけりゃあれはあっちの言葉で大麻だぜ。」
千空の父親がNASAに行くため、度々海外渡航へのクセがありその折に聴いたのだろう。
Aは苦笑した。
「それはそうだけど麻薬性がなければ十二分な布の役割を持つわ。それに昔から愛されてきたの、漁船の網、蚊帳、着物、それに麻布があれば正式なやり方じゃないだろうけど濾過の一つにも使えると思わない？」
「確かに言われてみりゃって、言われなくても知ってる。」
思わず身を乗り上げそうになって堪えた千空、Aは話を続ける。
「私は私のすることをするわ。
いつ追い出されてもおかしくないから。」
ペラリとその体に張り付けたツタや葉を取った。
「まさか追い出すわけねえだろう。
さっきも言ったがAはマンパワーの一つだ。」
「それでもきっとあなたたちの生活にストレスをかけかねない。」
Aは指を動かし続けながら、ゆっくりと剥ぎ取ったそれらを布地の上に置いた。
千空の言葉を借りるのは癪だが、まさに裸、でもこれしか服の型が取れないのだから仕方がない。
「安心しろ、あのデカブツにストレスも何もねえよ、俺もそんなものはない。
探究心さえ邪魔しなけりゃあな。」
「そう、」
彼女は並べられたそれらを前に、ふうむと口元に手を寄せた。
「さてさて、和風仕立てにするか、洋風にするか。」
「何だそんな拘れるのか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
