※ Fate and love 5 ※ (ページ7)

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194 ゴブレットページ7

「(僕に近づいたのは、実は全部嘘で、ヴォルデモート卿の手下って言うのも…)」

そうだとすれば、ハリーを守る口実でハリーに近づいたのは頷ける。

だが、そうなればハリーがあの時口走ったことに説明がつかない。
おまけにAに近づいて来た人の言い方では、その人が近くにいるせいで狙われている様な言い方だ。
そうなれば、そもそも護衛なんてする必要性は皆無だ。

「(怪しすぎる…)」

理詰めで行けばおかしなことばかり言う少女。
その少女は、ハリーの前に唐突に現れ、なんの音沙汰ともなく唐突に消えた。
そして幸か不幸か、彼女を追跡する時間はハリーにはない。

「(困ったな…今更ハーマイオニーには相談できないし…)」

しかもあのドラコに指摘されたとあってはハーマイオニー、ではなくロンが噛み付くに決まってる。
だいたいハリーだって本当は信用したくないのだ。

でもドラコは完全にハリーの話を論破してしまった。
あのドラコに、だ。

「(ああ…もうっ！)」

ドスドスと足音荒く立ち去ったハリーは、消化しきれない思いのまま宴会場に向かった。

ーーー

一方、一人見知らぬところに降り立ったAは、目の前の建物を見上げた。

ドラコに追い詰められたAだったが、偶然か必然か、あの時急に”ここ“が思い浮かんだのだ。
気がつけば、当たり前のように姿くらましをしていたA。

Aを出迎えるように鬱蒼とそびえ立つ建物。
古びたちいさな洋館は、あちこちから胡散臭い空気が漂っていて、正気な者なら絶対に踏み込みたくない領域だ。

そんな場所に、意を決して踏み込んだA。

瞬間、嗅いだこともないような異臭がAを襲った。
鼻孔をくすぐるなんてものじゃない。
吐き気をもよおすそれは、一歩踏み出した足を躊躇させるには十分だった。

「なに、これ…」

ギシッと音を立てながら、Aは杖を構えた。

まだ昼前だと言うのに、何故かあたりは薄暗く、建物の中では殊更光が通らないため、ほとんど周りが見えていない。

だが、Aは灯はつけない。
人がいないとも言えないこの状況で、明かりをつけるのは危険すぎるからだ。

Aは慎重に踏み込みながら、ニオイの元をたどる。

目を凝らしながらも、足の感覚だけを頼りに進み続ける。
コツンと足に何か当たったAは、ピタリと止まった。
手探りであたりを探り続け、指先が掠めたのは木製の手すり。

「(階段…)」

だんだんと慣れて来た視界を頼りに一歩ずつ踏み出す。