150 ゴブレット ただの魔女 ページ10
「おいポッティー・ポッター。」
開口一番に失礼なことをぬかしたドラコを背後から見つめていたAは、何やってるんだかと呆れた顔をした。
クィディッチ選手もびっくりのスピードで殴り掛かってきそうなロンをハリーは黙って制した。
「なんだよマルフォイ。」
殴られないうちにさっさと要件を言えと表情で語るロンに、ドラコは黙って体をよけた。
瞬間、現れたのは長身のドラコの背に隠れていたA。
息をのむ音をはっきり聞いたAはむりくりに作った笑顔で微笑んだ。
「初めましてMr.ポッター
私、A・マロニエと申しますの。
よろしければちょっとだけお茶しません？」
上品に、無駄なく、ストレートに、でも焦りすぎず。
愛想って大変ね、と心の中で他人事のようにため息をついたAは、自分の演技っぷりに自分で反吐が出そうだった。
そしてAの努力の甲斐あって、ハリーは無言で頷いた。
二人っきりの廊下。
こつんこつんと響くのは二人分の足音。
ロンと一緒にいたハリーは一人、ボーバトンの中でもあのフラーにも負けず劣らずで有名な女子に呼び出され、少しだけどぎまぎしていた。
だが呼び出されて5分経つが傍らの彼女は一言もハリーには話しかけてこない。
呼び出すからにはハリーの武勇伝を聞きに来たミーハーか何かかと思ったが、それも違うらしい。
何よりこの静かさに、そしてどことなくゆったりと安心しきったその顔つきが、ハリーの期待をもの見事に微塵にしていた。
「…ねえ、ハリー。」
唐突に名前で呼ばれ、ドキッとするハリーをよそにAはハリーのほうを見ずに続けた。
「あなたの名付け親があのシリウスブラックって、本当？」
あまりにも斜め上、いや垂直上の発想にハリーは言葉が出なかった。
どうしてそのことを、言葉に出さずとも顔で分かったのだろう、Aはゆっくりとかぶりを振った。
そして振り返ったその横顔がちっとも安心しきってない、こわばった表情だと、愚かにもハリーはようやく気が付いた。
「黙って、私の聞いたことに答えて。」
一切の質問は許さない、と淡いブルーの瞳は淡々と語る。
かつんと一歩踏み出すAの足音に対して、ハリーはたじろいだように一歩下がる。
「ハリー、イエスか、ノーで答えて。」
カツンと再び音が鳴る、
そして、
「お願い、ハリー。」
まっすぐ見つめてくるその目に、その雰囲気にハリーは黙って首を縦に振ってしまった。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
