148 ゴブレット 秘密の取引 ページ8
A・マロニエと名乗ったボーバトン生の彼女は、瞬く前にその名前を辺りに知らしめた。
あのフラーと肩を並べるのではという美しい容姿に、凛と通る心地いい声。
そんな彼女をちらちらと盗み見る視線が交差する。
だが彼女はそんなことは気にしないのか、いつも飾ったような美しい笑顔でいた。
それはとても人を引き寄せやすく、誰も彼もが彼女に近寄りたいとひそかに思うほど。
しかし、人の視線が外れたその瞬間、作っていた笑顔は見事に消える。
触れたら壊れそうなそんな儚さなんて吹き飛ばし、代わりににらまれるだけで一刀両断されてしまいそうなほど、鋭い目つきになる。
そんな彼女の醜態を、ホグワーツ生であるドラコはなぜか目の前で見せつけられていた。
「…あの、マロニエさん？」
「マロニエなんてまどろっこしいからAで構わないわ。
それと私、貴方と同じ14よ。」
「ええ、とじゃあA、、、」
一瞬言葉を詰まらせたドラコはちらりと彼女を一瞥してから、こほんと咳き込んだ。
「僕に何の用だ。」
「ハリーポッターに会わせてほしいの。」
出会いがしらに言ってはならない禁句を宣った彼女に、途端ドラコの顔は険しくなる。
「いきなり話しかけてきたかと思えばそんなことか。
残念だが他をあたれ。」
「嫌。」
むすっとした表情のまま彼の前を塞いだ彼女は、断固譲らないと顔で語る。
思いの他しつこい彼女にドラコは、やや苛立ちげに睨みつけた。
「君さっきからなんなんだよ。
僕が気に食わないのか、それとも僕をおちょくりに来たのか。」
「どちらも正解。」
「はあ？！」
堂々と喧嘩を売った彼女にドラコは一瞬カッとなったがそれもほんの一瞬。
やがて怒らせていた肩をさげ、呆れたようにAを見つめた。
「さっきから聞いていれば、失礼なことばかり。
マロニエ家は躾に困ってるようだな。」
「まあ、貴方だって失礼なこと言うじゃない。お互い様よ。」
それはとってつけた様なあの笑顔ではなく、心底可笑しそうなそんな朗らかな笑顔。
ほんの数分しか喋っていないはずなのに、いつの間にかこんなに距離を詰めてきた彼女に、ドラコは何処と無く違和感を覚えた。
それはあのぽっかりとどこかに置き去りにしてしまったあの写真とよく似た、違和感。
「…なあ、」
弱々しい声にAは黙っている。
14という幼さには似合わない艶やかな容姿。
しかしそれ以上にドラコを捉えて離さないのは、その人を魅了してやまない淡いブルーの瞳だ。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
