146 ゴブレット ページ6
「ち、違うわ、私は別に記憶喪失になったわけじゃないの。
パパもママのこともきちんと覚えてるわ。
ハリーや、ロンや、ホグワーツのことだって、勉強だってもちろんそうよ。
でも、ただなんでか知らないけれど、その子の記憶だけがないの、本当のことを言うとこんな手紙もらった覚えだってないのよ。
でも、こんなこと…」
ありえないわ、そう唇だけが動いたハーマイオニーだが、一つだけ心当たりがあった。
それは、魔法界でも便利な代物で、二年前にその魔法を駆使した教師すらいる程の代物。
魔法をかけられたその瞬間、もやがかかったように何も思い出せなくなってしまう、果ては自分の名前すらも。
「忘却呪文…」
「え、？忘却？」
考え事をする時のわが子の癖を瞬時に見抜いた二人は黙って口を閉じる。
そして、ハーマイオニーは深い思考の渦に、自然と飲まれていった。
「(でも一個人の記憶だけを、的確に消してしまうなんて、普通に考えてありえないわ。
でも、でも熟練した相手なら可能なのかしら。
でもそれならどうして私だけ覚えていないの？
パパやママが覚えているのはどうして？
ハリーやロンだってそんなこと一言も言っていなかったわ。
パパ達に誰かが魔法をかけた？でもそんなのおかしいわ。
ならおかしいのは…私たちなの？
でもよくよく考えたらどうしてAっていう子は私たち何も言わないのかしら。
私がAなら何をしてでも思い出してもらうわ。
手紙が来ているのはもう一年も前だし、それなら尚のこと変よね。
それとも思い出してもらうほうが厄介だった？
魔法をかけたのがA自身だったら…でもそれならどうしてわざわざ？)」
自分が知らない間にそのAという女の子と喧嘩でもしたのかと思い、日記から何から何まで探るがそんなことはない。
写真や何かA示す証拠が残っていないかと思っていた矢先だった。
不自然にとられている写真や、不自然に穴が開いている自分の日記を見れば自然とその少女のことだと簡単に予想がついた。
ハーマイオニーは自分の生真面目さをこの時ほどほめたいと思ったことはない。
文章の端々に浮かんでくるAという少女は、女のハーマイオニーから見ても魅力的な人だった。
冷静沈着で、魔法のレベルも非がなくまんべんなくこなしてしまう優等生、変なところで真面目で、愛想よくするのが苦手、何よりあのドラコを振りませる唯一の存在だと知ったときは心底驚いた。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
