188 ゴブレット 雨 ページ48
第三競技が行われるその日、空はあまりいい天気ではなかった。
降りだしそうな空模様をAは、ホグワーツの図書室の窓からのぞいていた。
朝から準備で大忙しのホグワーツは、普段の忙しさとは打って変わって静かだった。
だからだろうか、誰か一人近づいてくるだけでも、その足音はよく聞こえる。
「ぼくになんのようだ。」
片言のイギリス英語に、大丈夫よ話せるからとAは流暢なブルガリア語で返した。
聞きなれた母語にほっとしたのかビクトール・クラムはAからわずかに離れた場所に腰を下ろした。
いきなり自分の間合いに踏み込まないあたり用心されているな、と感じるAだが、そこにはあえて触れず首元からきらりとひとつのネックレスを取り出した。
「貴方、これに見覚えはある？」
「…君、それを、どこで…」
大きな正三角形の中には、丸と、三角の頂点からまっすぐに降りている一本の棒、という独特のデザインが施されたそれ。
物心ついたときから持たされていたそれは、Aの力に関係するものでもあり、またドラコがAの秘密を守ると誓ったときに預けられていたものでもある。
今はAの手の中にあるが半分はドラコの所有物ととってもおかしくはない。
ボーバトンへの編入を果たしたとき、シルビアから掠め取られたそれはフランスでは禁句と扱われている。
クラムを呼び出したのはダームストラング生の反応を見るのと同時に、これについての情報を集めるためでもあった。
だがネックレスを見た途端、クラムはまるで金縛りにでもかかったかのように硬直し、動向をこれでもかと見開いていた。
「…Msマロニエ、それは、君の、、君の物なのか？」
「そうとも言うし、そうとも言わないわね。」
「それをどこで手に入れた。」
「さあ？どこだったかしら？」
「それが何を意味するかも知らないのか＿＿＿」
たとえるなら絶望に近かっただろう。
非難めいた視線を真っ向から受け止めたAは、ぶるぶると震えているクラムの握りこぶしにちらりと視線をよこす。
「これには何かすごい秘密があるの？」
「秘密だと？それは秘密なんかじゃない、ただのただのマークだ、あの世紀の大悪党、ゲラート・グリンデルバルドのエンブレムだ！」
がたがたっと思い切り立ち上がるクラム。
そして図書室にはふさわしくない怒号、あのマダム・ピンスすらやってくることはない。
Aは黙って手の中にあるエンブレムとやらを見つめ、そしておもむろに顔を上げた。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
